中国本土の感染症急拡大を受けて、日本や台湾をはじめとする中国の近隣国は入国規制措置を取っている。米当局も28日、中国からの入国者に新型コロナウイルスの検査を1月5日から義務付けると発表した。
米当局によれば国籍やワクチン接種の有無にかかわらず、中国本土、香港、マカオからの2歳以上のすべての渡航者が対象となる。出発の10日以上前に陽性反応がでた渡航者については、陰性証明書の代わりに回復証明書を提示することも可能とした。
欧州初の国としてイタリアも28日、同様の措置を実施し中国からの入国者に新型コロナ検査を義務付けた。すでに検査を開始していたミラノのマルペンサ国際空港では、26日に中国からミラノに到着した飛行機2便で乗客の半分近くが陽性だったという。大半は無症状だとした。
新型コロナの感染が拡大する中、中国当局は26日に来年1月8日から国境を再開すると発表した。中国を出入りする国際便の数の上限も廃止される。
中国国営メディアによれば、海外渡航を待ち望んでいた中国の人々の旅行サイトへのアクセスが殺到している。一部の旅行サイトでは、国際航空券の検索数は850%にも跳ね上がったという。人気の高い渡航先は日本や韓国、タイとされる。
いっぽう、3年続いたゼロコロナによる家計圧迫や各国のビザ取得の困難さなどから、まだ海外旅行「解禁」とは呼べないとの指摘もある。
中国人観光客からも人気の高い沖縄県だが、石垣市の中山義隆石垣市長は「正直、今、私達は中国からのインバウンド客は全く求めていません」とツイート。長らくのコロナ不況によるホテルや飲食店の人手不足を一因とした。
感染拡大を危惧して、中川氏は「中国海警局の船が長時間に渡り尖閣諸島周辺を領海侵入し圧力をかけていますが、中国側から入国規制緩和を求められたとしても、絶対に譲歩や忖度をしてはいけません」と日本政府に訴えた。
透明性の欠如
中国が国境を再開したことについて、ウイルス学者のショーン・リン氏は「極めて無責任」と断じた。「コロナが武漢で最初に発生した当時、武漢で感染した人々は世界中を旅行することが許されていた。戦略は今も以前と同じだ」。
米国当局者は、今回の感染拡大における中国政権の透明性の欠如が、新たな渡航制限を課した主な要因であるとしている。
匿名の米国当局者は、27日に報道機関に提供した文書のなかで、中国から報告されているウイルスゲノム配列データの透明性の欠如を指摘し「このデータがなければ、公衆衛生当局が、潜在的な新種の変異株を確実に特定し、蔓延を抑えるための迅速な措置を取ることはますます難しくなる」と語った。
これに先立ち、中国外務省の汪文斌報道官は新型コロナの感染が拡大している中国への水際対策強化を米国が検討していることについて「防疫措置は科学的で適度なものでなければならない。正常な人的往来に影響を与えるべきではない」と反発していた。
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