前回までの記事はこちらです。
「借りた剣」米国の技術で構築される中国の軍事力
「借りた剣」中国の核搭載ミサイルは米国の先端研究所から
中国共産党への技術流出を防ぐために何ができるのか。そしてどの時点で米国の最大の戦略的競争相手であり、軍事的にも潜在的な敵である中国共産党を、米国企業が支援し加担するようになるのだろうか。
米国から中国への研究や技術流出は、必ずしも企業の不正行為を示しているわけではない。多くの場合、中国共産党の法律が原因となっている。
この理由の1つは、中国共産党がデータそのものを「国家資源」と見なしているからだ。中国本土の企業が保存するデータは、政権の国家安全保障、諜報、サイバーセキュリティ、およびデータ輸出法の対象となる。これらは、技術移転を容易にするために設計された。
共産党政権による2021年の個人情報保護法は、中国国内で収集された特定のデータを海外に送信する前に、中国共産党の職員が精査することを義務付けている。同様に、2016年のサイバーセキュリティ法は、ネットワーク事業者に対して、公的および国家安全保障組織に技術サポートを提供することを義務付けている。一方、2017年に制定された国家情報法は、政権からの要求があれば、すべての組織が機密情報を含むあらゆるデータを引き渡すことを義務付け、「国家情報活動を支援する」ことを要求している。
この一連の法律は、中国に進出している米国企業の知的財産と最も重要な技術を中国共産党当局に流すことで、米国企業を効果的に政治化するのに役立っている。
「中国と香港で事業を行う外国企業は、自社および顧客のすべての知的財産、企業秘密、およびデータを中国共産党に提供しなければならない」「これには、中国で活動するすべてのコンサルティング会社と銀行も含まれる」とフレミング氏は言う。
こうした中国共産党の権威主義的なアプローチで、自国の開発を超強化する目的でデータ収集を行うことは、米国の技術が中国共産党に行き着く方法の代表格である。
しかし、長年このような状況が続き、インサイダー脅威の問題が広く知られていることを考えると、米国企業があまりに長く何も考えずに現状を継続しているようであれば、中国共産党の軍事的発展に加担していると見なされる時が来るのであろう。
借りた剣で殺す
米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)とコンサルタントグループのホライズン・アドバイザリーが発表した2022年のレポートは、実際多くの米国企業が中国共産党に直接的および間接的な支援を提供していたことを明らかにしている。
アマゾン、アップル、デル、フェイスブック、GE、グーグル、インテル、マイクロソフトは、「中国の国家監視、軍事近代化、人権侵害を直接的または間接的に支援する可能性のある取引に従事し、ビジネス関係を維持している」と報告書は述べている。
この傾向は長年にわたって本格化しており、関係する企業のほとんどは、政権に技術のクローンを作らせるような形で中国共産党と協力し続け、米国の国家安全保障を直接的に損ねている。
たとえば、2014年に米半導体大手インテルは、中国半導体メーカーである清華ユニグループ傘下の会社に対する15億ドルの投資に合意したが、後にこの企業は中国軍とのつながりが発覚したために、米国企業の買収を阻止された。
さらに米政府は2015年、核開発への影響を懸念してインテルの特定マイクロプロセッサを中国で販売することを禁止した。
また同年、パソコン大手のデルが、中国国営ソフトウェア会社であり、中国軍に通信機器を販売する清華ホールディングスの子会社・清華同方とパートナーシップを結び、高度なクラウドコンピューティング、ビッグデータ、スマートシティの開発を支援しようとした。
同年、IBMは同じ技術を中国のパソコンメーカーLenovoに販売し、中国軍が利用できるようにしたことが発覚した。そのため米海軍は、敵のミサイル攻撃を追跡して防御するシステムで使われる新しいサーバーを調達することを余儀なくされた。
2016年、通信大手シスコは中国軍にミサイル研究を提供するクライアントに対して、サービスすることで知られるインスパー(Inspur)と、ITインフラストラクチャ、データセンター、およびネットワーク機器を開発するために、1億ドルの合弁会社を設立した。
また、2016年には、米国を拠点とするヒューレット・パッカードが、ユニスプレンドーの子会社であるH3Cとの合弁事業に参入した。H3Cは後に、中国共産党の軍事近代化を支援したとして、米国によってブラックリストに載せられた。
(つづく)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。