サムスン元幹部ら10人を起訴 中国への半導体技術流出に関与

2025/12/26 更新: 2025/12/26

韓国検察はこのほど、国の中核となる半導体技術を中国に不正に移転した疑いで、サムスン電子の元幹部およびエンジニアを含む10人を正式に起訴した。事件の焦点は中国のメモリーチップメーカー、長鑫存儲科技(CXMT)に当てられており、世界的にメモリーチップ競争が激化する中で、技術機密の流出が国家安全保障上の重大事件として扱われていることを浮き彫りにしている。

検察の調べによると、被告らは2016年から2023年にかけて、サムスンが世界に先駆けて開発した10ナノメートル級DRAMの製造工程技術を、長期かつ組織的に中国へ不正に漏えいさせ、韓国の半導体産業および国の技術安全に重大な損害を与えたとされる。

10ナノ級DRAMの中核技術「丸ごと流出」

韓国の半導体専門メディア「The Elec」によると、ソウル中央地検の情報技術犯罪捜査部は12月23日、事件の中心人物は、かつてサムスン電子で研究開発の要職を務め、その後、CXMTの開発責任者に就任したA(実名非公表)であると明らかにした。AはCXMTにおいて10ナノ級DRAMの技術開発を全面的に主導し、「産業技術保護法」に違反して国の中核となる技術を海外に流出させた疑いで、勾留されたまま起訴された。

Aとともに10ナノ級DRAMの開発に携わった4人の中核エンジニアも勾留されたまま起訴され、さらに5人の分野別開発責任者は身柄を拘束されずに起訴された。

検察は、CXMTは中国共産党(中共)当局が巨額の資金を投じて設立した、中国初かつ現在唯一のDRAMメーカーであり、10ナノ級DRAMの研究開発から量産に至る全工程で、韓国国内の世界最高水準の半導体中核技術を不正に使用していたと指摘した。

規制を回避 数百項目の工程パラメータを手書きで持ち出し

捜査の結果、元サムスン研究員のBは、2016年にCXMTへ転職する際、電子データのコピーや撮影による追跡の痕跡を避けるため、約600項目に及ぶ重要なDRAM製造工程および装置パラメータを手書きで書き写し、中国へ持ち込んでいたことが判明した。

検察は、これらの資料はサムスンが5年をかけ、約1兆6000億ウォンを投じて開発した10ナノ級DRAMの中核成果であり、製造工程全体の中でも最も商業的価値の高い技術資産に当たると認定している。

さらに、CXMTのクリーンルーム工程を担当していたCについても、サプライチェーンを通じてSKハイニックスの国の中核となる技術を不正に入手していた疑いが持たれており、技術流出の範囲はさらに広がった。

検察は、これらの流出技術によってCXMTは多くの先端工程の欠落を急速に補い、2023年に中国で初めて10ナノ級DRAMの量産を実現したとして、両者の間には「高度な関連性がある」としている。

検察「組織的犯行」と認定

検察の発表によると、関係者らは捜査を逃れるため、ペーパーカンパニーを設立したり、事務所をたびたび移転したほか、内部で「国家情報院がすぐ近くにいると想定せよ」といった行動指針を共有し、拘束された場合に暗号で仲間に知らせる取り決めまでしていたという。

検察は、技術流出は明らかに組織的かつ継続的に行われたもので、単独犯ではないと指摘した。国の中核となる技術を脅かす犯罪に対しては、厳正に対処し、法に基づいて重く責任を追及する姿勢を強調した。

損失は数十兆ウォン規模

検察の試算では、サムスン電子だけでも、技術流出による市場損失は約5兆ウォン(約5259億円)に上る可能性があるという。産業全体のサプライチェーンや将来の競争力への影響を含めれば、被害規模は「数十兆ウォン」に拡大する恐れがあるとしている。

この事件が明るみに出たのは、AI需要の高まりを背景に、世界のメモリーチップ市場で価格上昇と供給逼迫が進むさなかであった。技術流出は企業の競争力にとどまらず、国家の技術安全保障にも直結する問題として、韓国の産業界および技術界で大きな注目を集めている。

王君宜
王君宜
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