英国のケンブリッジ大学は、自校に所属する研究機関が、中国軍との関連が指摘されている中国の航空・宇宙産業関連企業と協力関係をもっていたことが明らかになったため、同企業との協定を解消することを決めた。英タイムズ紙が報じた。
表向きは「民用」をうたった共同研究
タイムズ紙は、慈善団体の英中透視チャリティ(UK-China Transparency charity)から、ケンブリッジ大の先進フォトニクス&エレクトロニクス・センター(CAPE)が、中国の北京航天自動控制研究所(BIACD)と4項目の研究プロジェクトにおいて共同で取り組んでいたことを示す文書を入手した。
このほか同センターは、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為)や航空宇宙産業の関連企業など、多くの中国系企業と提携を結んでいたとされる。
米国務省によると、BIACDは中国航天科技集団公司(CASC)の子会社で、中国共産党が推進する宇宙計画に寄与するとともに、無人機や兵器システムの部品を製造している中国最大の運搬ロケット研究機関とされる。
同省のウェブサイトによると、BIACDは中国の「大陸間戦略核ミサイルの唯一の製造企業」と説明されている。また同社が製造する無人航空機の彩虹4(CH-4) は、ミャンマー軍事政権やコンゴ民主共和国、アラブ首長国連邦、パキスタン、セルビアなどに売却されている。
そのBIACDが掲載している中国語のオンライン広告には、「国防の強化に卓越した貢献をする」ことが目標に掲げられている。
ケンブリッジ大の関連プロジェクトのウェブサイトによると、BIACDが開発した技術は、次世代電力網と呼ばれるスマートグリッドから石油、緊急通信、スマート製造に至るまで幅広く使用される予定だという。ただし、疑われているようなBIACDと中国軍との関連については、言及されていない。
「軍事部門」という中国企業の裏の顔
しかし、英中透視チャリティの文書では、ケンブリッジ大と中国系企業との協定に関するリスク評価において「BIACDには中国の民間・軍事部門が設けられており、BIACDの事業の約60%が中国軍との関連が疑われる」と指摘されている。
2014年に始まったケンブリッジ大とBIACDのこれらの協定は、今年9月末で終了する予定だ。
ケンブリッジ大は、BIACDから受け取った約210万ポンド(約3億8千万円)の資金のうち、使われなかった120万ポンド(約2億2千万円)を返還するとしている。
ケンブリッジ大によれば、このたび解消される同協定について「関係する全ての研究プロジェクトは民用目的であり、輸出規制についても承認されている」と説明している。
しかし、2022年3月にタイムズ紙が発表した調査によると、英大学は中国から研究資金2億4000万ポンド(約441億円)を受け取っており、この資金を提供している中国企業のほとんどが中国共産党の軍部との関連が疑われている。内訳はファーウェイが4000万ポンド(約73億円)、その他の数社は各2000万ポンドとされる。
これらの企業は、戦闘機や通信技術、ミサイル技術を中国軍に供給しているとして、米政府から制裁を受けている。また、これらの企業は、中国軍の兵器開発と関係が深いとされる中国の大学「国防7校」とつながりを持っている。
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