大手SNS「X」(旧ツイッター)には、若い女性のAI画像を使用したアカウントがあふれている。性的な描写で男性を誘引し、脅迫する詐欺アカウントだ。このような詐欺は「性的脅迫(セクストーション)」と称され、米国や英国の捜査機関も警告を出している。日本でも被害が広がる可能性がある。特に、中国の美女を模したAI画像や動画を使用したアカウントが急増している。
日本在住の元中国官製新聞記者、王志安氏は5月にXでの投稿を通じて、多数の性的なスパム投稿に気づいた。中国人女性を模した画像を使用する詐欺アカウントからは、中国語で「私のベッドをめちゃくちゃにして」といった性的な言葉がリプライに書き込まれてきた。
影響力のある中国の弁護士、民主活動家、学者、ジャーナリストなどのアカウントが、このような性的な詐欺アカウントのターゲットとなっていることが多い。特に、共産党体制に批判的な意見を持つオピニオンリーダーへの返信に多く見られた。
本人の投稿内容とは無関係な描写に、フォロワーたちは同氏のXを見るのにためらいを抱くようになり、有識者の発信から疎遠になっていく恐れがある。実質的な迷惑行為となっている。
中国共産党は、国内のインターネット上のアダルトコンテンツに対する規制を強化している。そのため、香港大学国際学院の助教授、丁潤澤氏は「中国人はアダルトコンテンツに慣れていないため、性的脅迫の被害に遭いやすい」と指摘している。
しかし、こうしたSNSで蔓延する性的脅迫が、はじめから中国の反体制派を狙っているかどうかは不明。もともと、Xのような米国のSNSには、中国共産党に批判的な中国人のアカウントのほうが多く、影響力も高くなっている。
セクストーションは数年前より英語圏で、中高年から若者と幅広い層で被害が確認されている。米連邦警察(FBI)や英国警察、カナダ警察も一様に警告文書を発表している。米国ではカナダ警察によれば、被害者の9割は若い男性だという。
性的脅迫の手口は、他のデート詐欺やリベンジポルノなどの手法と似ている。詐欺アカウントは、個別のチャットに誘い、勤務先や住所、裸の画像や動画の交換を求める。そして、ある時点で「家族や職場に流す」と脅迫し、口止め料を要求するのだ。
昨年、国際警察機構(インターポール)は、性的脅迫に関与する12人を逮捕した。被害者の多くは香港やシンガポールの住民で、被害総額は4万7千ドルとされている。インターポールは、新型コロナの流行期にサイバー犯罪が増加したと指摘している。
警察当局は、被害者に対して犯罪を警察に報告することを強く推奨している。日本の警察庁も、「家族や友人であっても、オンラインでの下着姿や裸の写真や動画の送信は控えるよう」と警告している。被害は男性に限らない。警察庁は、未成年の女性と偽った男の詐欺師が女子高校生に接触して、女性が被害者となるケースを紹介している。
日本では、性犯罪の厳罰化に伴い、性的脅迫に関する法律が整備されてきている。東京都では、18歳未満の青少年に対する性的な自撮りの要求だけでも犯罪とされ、30万円以下の罰金が科されることとなっている。総務省によれば、今年7月から16歳未満の子供に対して正当な理由なく性的な姿勢の撮影を求める行為を罰する法令が施行された。
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