中国共産党(中共)が主導する「一帯一路」が今年で10周年を迎えた。参加国のうち、多くのアジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々は膨大な債務を抱えるようになった。
コロナの影響で経済が停滞し、全世界での反中感情が高まる中、多くの国々はこのプロジェクトに対する関心を失っている。中国の公式報告によれば、数十の国々で「一帯一路」への参加意欲が100%減少したとされている。
この広域経済圏構想は、中国共産党自身に何をもたらしただろうか。経済学者によると、「一帯一路」は経済的に失敗しただけでなく、その真の目標である政治的利益さえもたらしていない。一帯一路は「持続不可能」で「長期的価値がない」ものだ。
政治的目的:中共を批判しないように
米国オールド・ドミニオン大学の国際ビジネスの教授・李少民氏は新唐人テレビに応じ、中国共産党の「一带一路」の目的を理解するには、まずその統治の理念と方法を理解する必要があると述べた。
「中共の理念は、政治上は共産主義の権威主義を採用し、一方、開放経済の体制を採用している」
李氏は、経済面でも中共は閉鎖的な経済を維持したいだろうと指摘した。なぜなら外国の民主主義、立憲主義、人権法治を中国に入れたくなく、改革開放以前の統治のほうがしやすいからだ。
しかし、完全に鎖国する計画経済は、完全に失敗した。中共は自らの支配を維持するために、仕方なく国を開放し、以前は厳しく管理されていた中国人に少しの自由を与えた。
しかし改革開放は中共にも大きな挑戦をもたらした。
李教授によれば、改革開放により中国人は外国で新しい知識や価値観を学ぶことができる。外国人が自由に意見を表現できるのに対し、中国ではできない。これは中共にとって難題である。
「鎖国はしてはいけない。同時に政治面で他国の影響を避けたいなら、外国に影響し、外国を買収することにしよう。外国が中共を批判しなければ、中国人も中共を批判する理由はないだろう」
「実際に、一帯一路の第一の目的は外国からの批判をなくすことにある。経済的利益がもたらされればそれは素晴らしいことだ」
人権無視の大手会社
李教授は、中共の支配下の中国には、自由市場メカニズムの下の自主権を持つ企業は存在しないと述べた。彼の視点では、中国全体が人権のない大企業のようだ。「中共はこの巨大な国家企業の株主。中央政治局は、その取締役会に相当し、中共総書記は会長に相当する」
「国有企業はその会社の部門に過ぎず、民間企業は子会社のようなものだ。例えば、ファーウェイのような企業は、100%の民間企業であるにもかかわらず、完全に中共の指示に従っている」と教授は例を挙げて説明した。
外国の企業は「フランチャイズのようなもの」だ。中共のルールを守らなければ排除される。国の各部門は、会社の各部門のようなものであり、中国の一般市民はこの大企業の従業員だが、権利を持っていない。
「人権の希薄さ」も、中国製品が安価である理由の1つである。したがって、この観点から見ると、「一带一路」はこの「大企業」の戦略に過ぎない。余剰生産を輸出し、さらに多くの利益を生み出し、影響を拡大することができる。
全世界で賄賂を使用
また李教授は、中共が政治的目的を達成するために、世界中の個人、政治家、企業、さらには他国の政府にまで賄賂を行っていると指摘する。
一帯一路において、中共の常套手段は、相手のプロジェクトのオファーに価格を上乗せし、その超過分をその国の役人に贈賄し、彼らにプロジェクトを承認させ推進するインセンティブを与える。
米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)の2019年の報告書の例を挙げた。一帯一路イニシアチブで最も活発な企業である中国交通建設株式会社は、フィリピンの高速道路契約の入札で詐欺行為があったとして、2009年に世界銀行から8年間の資格を取り消された。
その子会社である中国港湾工程公司はバングラデシュの大臣に、あるプロジェクトに関して役人に贈賄したと指摘された。
李教授は、「一带一路」の推進は中共の独裁に基づいていると指摘。取引先の国々には民主主義が多少存在するため、中国のように無制限にプロジェクトを進めることはできない。結果として、多くのプロジェクトが経済的に成功せず、損失を出す可能性が高い。
同氏はスリランカのハンバントタ港を取り上げ、中国がその港を99年間リースする意味を疑問視し、「一带一路」は経済的に失敗していると結論付けた。
政治的な側面においても、中国が必ずしも勝利を収めるわけではない。中共の政治的な影響を拡大し、将来的に軍事的利用のために投資を行うつもりだ。しかし、賄賂を受け取った高官が永遠に権力の座にいるわけではない。
李教授は、例としてマレーシアの元首相、ナジブ・ラザク氏を挙げている。彼は中国からの賄賂の受領の疑いで調査されている。
西側の反撃策:脱中共化
李少民氏は、9月のG20会議で米国がインドや他の国々と「インド・中東・欧州経済回廊」(IMEC)に関する協力覚書を結んだことは、中国の「一带一路」構想に対する対抗策であると考え、それだけでは十分な対策とは言えないと指摘している。
なぜなら、他の国々は中国のような独裁的な「全国の資源を集中する大企業」ではないからだ。中国はGDPの1元あたり、0.5元以上を政府がコントロールできるのだ。
李氏は「真に中共の一带一路に効果的に対抗し、中共の影響を抑えるためには、すべての民主国家が結束して、最大限に中共に『ノー』と言わなければならない。できるだけ中共とデカップリングし、サプライチェーンを徐々に中国から移転する必要がある。これこそが、民主国家が中共の影響を受けないための効果的な戦略である」と述べている。
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