中国南部の広東省は、北京に比べればはるかに温暖ではあるが、今の時期は真冬にあたる。12月の平均気温は21.6度だという。
今月9日、広東省のある街中に、靴を履かない裸足で、ひどく汚れた服を身に着けたストリートチルドレンがいた。男の子が2人。兄弟であるらしい。
心優しい市民が声をかけ「お腹、空いているかい?」と尋ねると、2人のうちの兄であろうか、やや年上に見える子は「うん」とうなずいた。そこで、この市民はパック牛乳やソーセージなどの食品を買ってきて子供たちに渡し、警察にも通報したという。
警察の取り調べで、この子たちの状況が明らかになった。「母親を早くに失くし、祖父母もすでに他界。父親は半月以上、行方不明になっている」という。
しかし現在、この動画はネット上から削除されている。中国国内の真実を伝えるセルフメディア「真相傳媒(@TruthMedia123)」が伝えた。
この動画の関連投稿に寄せられたコメントのなかには「背景の画像がとても皮肉だ」というものがあった。確かに、子供たちの背後には「巨大な赤い看板」がある。
そこに書かれてあった文言は「中国式の現代化を以て、中華民族の偉大なる復興を推進する(以中国式现代化 推进中华民族伟大复兴)」である。中共党首をはじめ、中共の高官らがよく口にする政治スローガンだ。
そのスローガン自体、まことに空虚な言葉である。さらに、この「赤い看板」の前にいる2人のストリートチルドレンは、看板の文言とはあまりにもかけ離れた中国の現実であり、もはや「残酷な皮肉」でしかないのだ。この動画が当局に削除された理由は、そのためであるかもしれない。
また、コメントのなかには、このようなものもあった。
「(この子たちの)予測可能な2つの未来は何か。歩く臓器か、政府によって1人5万ドルで外国人に売られるかだ」
これは単なる冗談ではない。この子たちが、今も中国で横行する「臓器狩り」や「人身売買」の犠牲者になる可能性を言っている。ぞっとするような「予測」であるが、ありえないことではないのだ。
この子たちがその後、どうなったかはわからない。安全な場所に保護されたことを祈りたいが、はたして今の中国に、十分な愛情と温かい食べ物を与えてくれる場所があるかどうか。
「(この子たちに)明るい未来があるとは、どうしても思えない」というのが、多くのネットユーザーの正直な見解だ。筆者(李凌)も、とても楽観視できないのが今の中国の状況だ、と言わざるを得ない。
そしてここで、さらに付言しなければならない冷酷な現実がある。ここ数年来の疫病の大流行や洪水、あるいは貧困からくる飢餓などで、どれだけ多くの中国人が死亡したか、もちろん中共当局は一切公表していない。
そのため、かつて14億人といわれた中国の人口のうち「何分の1かが、すでに失われている」ことは、もはや世界が想定しておくべき中国の実像になっている。
その結果の一つとして、親や身寄りをなくしたストリートチルドレンが、中国の南から北まで無数にいる。
そうした路上の幼い子供たちは、恐ろしい人身売買業者の目を逃れながら、今年の厳しい冬を迎えることになる。
(あまりにも現実離れした理想をうたう「赤い看板」の前にいた、路上生活する幼い兄弟)
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