米国司法省(DOJ)は、元米海軍水兵が1月8日に、中共(中国共産党)政権に賄賂と引き換えに米軍の機密情報を提供したとして、懲役27か月の判決を言い渡したと明かした。また、罰金5500ドル(約79万7500円)の支払いを命じられた。
米地方裁判所のR・ゲーリー・クラウスナー判事は1月8日、トーマス・チャオと名乗るウェンヘン・チャオ(Wenheng Zhao)兵曹(26)にこの判決を言い渡した。
コートハウス・ニュース・サービス(Courthouse News Service)によると、司法省はチャオに対し、政府の捜査を妨害したとして懲役37か月の刑を求刑していた。
26歳のチャオは2023年10月、中共諜報員との共謀1件と賄賂受領1件で有罪を認めた。司法省によると、チャオは「公務に違反して、米軍の機密情報を収集し、諜報機関当局者に送信する汚職計画に関与した」ことを認めた。
彼はカリフォルニア州にあるベンチュラ郡海軍基地で勤務していた。チャオはセキュリティ・クリアランスを持っており、制限付きの軍事・海軍施設に立ち入ることができ、米海軍の作戦安全保障、軍事訓練、重要インフラに関連する機密情報を密かに収集し、中共の情報機関のある当局者に送信していた。
司法省によれば、チャオは沖縄にある米軍レーダーシステムの「太平洋地域における大規模な海上訓練計画、作戦命令、電気回路図と設計図」を渡したことも認めた。さらに、「高度な暗号化通信手段を使って情報を送信し」、証拠を隠滅し、中共のスパイとの関係を隠したと自供した。
チャオは2021年8月~2023年5月までの間に、14回に分けて中共のスパイから約1万5千ドル(約217万5千円)の賄賂を受け取った。
司法省のプレスリリースによると、司法省国家安全保障局のマシュー・オルセン次官補は「チャオは国を守るという厳粛な誓いを裏切り、米軍で働く人々を危険にさらした」と語った。
「今日、チャオはこれらの犯罪の責任を問われている。司法省は、わが国の安全を損なおうとする中共政府の取り組みと闘い、その一環としてわが国の法律に違反した者の責任追及に取り組んでいる」と付け加えた。
FBI国家安全保障局のラリッサ・ナップ副局長は、プレスリリースの中で、「中共は、諜報活動で優位に立つためなら、どんな法律や規範も自由に破ることを繰り返し示してきた」と語った。
中国生まれで米国に帰化したチャオは、2023年8月3日に逮捕されて以来、保釈金なしで拘留されている。彼は水陸両用強襲揚陸艦USSエセックスで勤務する現役水兵のパトリック・ウェイ(ウェイ・ジンチャオ)とともに拘留されていた。
他のケース
司法省の声明では、ウェイは2022年3月から逮捕されるまでの間に、エセックス号の写真や動画を送り、複数の海軍艦船の位置を明らかにし、エセックス号の兵器の詳細を提供したとされている。
司法省によると、ウェイは2022年6月に、輸出規制に関する警告や、エセックス号や他の船舶の様々な操作システム(動力、操舵、航空機、甲板エレベーター、ダメージ・コントロールの詳細など、約30冊の技術・機械マニュアルを中共当局者に送った。
2021年、米海軍の元水兵が、夫と共謀して機密軍事装備を中共に違法に送ったとして、懲役30か月と罰金2万ドル(約290万円)の判決を受けた。
2019年、元CIA職員のジェリー・チュン・シン・リーは、2010年にCIAを去った後、中共情報機関に機密情報を提供した共謀罪を認め、19年の実刑判決を受けた。
これらの事件は、米国における中共政権の諜報活動を浮き彫りにしている。2020年、FBIのレイ長官は、FBIは10時間に1件のペースで新たな中国防諜事件を捜査していると述べた。レイ氏はまた、FBIは当時、2千件以上の中国関連の防諜捜査を行っていたと述べた。
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