世界最大の自動車市場の中国で、自動車メーカーが相次ぎ破綻している。最近では中国の高級電気自動車(EV)ブランド「HiPhi(高合)」が操業停止となった。こうした状況に対し、中国の大手電気自動車メーカーのトップは中国当局に対し、社会的な損失を最小限に抑えるためにM&A制度を確立するよう求めた。
2月18日、高合汽車は6か月間の操業停止を発表した。昨年は、「威馬汽車」や「奇点汽車」などの大手自動車メーカーが経営破綻した。
こうした状況を受け、理想汽車の李想・最高経営責任者(CEO)は21日、自動車企業の合併・買収(M&A)制度を確立するよう中央政府に求める文書を発表。文書の中で、企業の破綻による社会的な損失は合併・買収による社会的な損失の10倍大きいとし、今後有名ブランドが経営・財務面での問題に直面するおそれがあると説明した。
中国問題の専門家は、こうした状況について、中国経済の構造に問題があると指摘した。
国立政治大学(台湾)の丁樹範教授は、「最大の問題は、中国が純粋な市場経済ではないことだ」「中国では一部の自動車産業が地方政府の支援を受けている。地方政府には経済に関する独自の論理を持っており、その論理は市場経済の論理とは異なるかもしれない」と述べた。
中国における自動車産業の一部は「諸侯経済(地方行政本位の群雄割拠的な経済)」の産物であり、合併や買収行為を難しくしているとの考えを示した。
中国問題専門家の王赫氏は「中国共産党下の制度は歪んでおり、経済市場への国家介入が強く、中国市場は非常に奇形である」と指摘した。
また、中国では新エネルギー車(NEV)市場に対して楽観的な見方が多いものの、十分な資金援助はなく、自動車メーカーの技術や経験も不十分であると述べた。
昨年初めのデータによると、中国には新エネルギー車関連の企業が約60万5800社存在している。2018年には、中国の電気自動車メーカー数は400以上に達していたものの、2019年には一定の売上を維持している自動車企業はわずか10社程度に過ぎない。
新エネルギー車メーカーのほか、多数のガソリン車メーカーにも強い危機感が広がっている。
昨年、電気自動車の普及促進団体である中国電動汽車百人会は、向こう3~5年のうち、新エネルギー車の発展とともに、ガソリン車ブランドの80%が「破綻あるいは経営上の方向転換」を迫られると予測した。
中国当局は、自動車産業を柱産業として発展させる方針を出している。しかし、丁樹範氏は自動車産業の発展には懸念点が存在していると指摘した。
丁樹範教授は、「中国経済は問題を抱えており、多くの人々が支出を減らしている。そうした中でも、BYDは電気自動車では世界的な競争力を見せているが、ガソリン車となると中国では適格な自動車用エンジンの生産が難しいため、日本やドイツと協力していく必要がある」と述べた。
中国の独立系の経済学者で、ユーチューブチャンネルに44万人の登録者(現時点)を持つ「財経冷眼」は、「中国のマクロ経済は下降スパイラルに陥っている。失業率が高まり、賃金の伸び率が低下している」と指摘。「このような状況下では、自動車、特に電気自動車に対する一般の需要が減少しているため、需供バランスをとるために、多くの自動車工場が閉鎖されなければならない」と述べている。
国内だけでなく、対外的な問題も存在していると指摘。メーカーは「電気自動車を欧米などに輸出したいが、関税や貿易障壁が設けられている」「同国は公害が多く人権尊重意識が低いため、生産コストが低すぎる。 生産コストが低すぎるため、非常に安価で販売される可能性がある」と述べた。
「財経冷眼」は、深刻な過剰生産を国内で吸収できなければ、関税もかけられおり、中国のEVメーカーは内外のジレンマに陥っている。
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