米国の情報筋によれば、3月22日にモスクワ郊外のコンサート会場で多くの死者を出した銃撃事件が発生したのは、イスラム国(ISIS)によるものであるとロイター通信が報じた。
事件は、ロシアのクラスノゴルスク市で、ロックバンド「ピクニック」のライブ中に起きた。会場のクロッカス・シティ・ホールが焼失し、少なくとも133人が死亡した。イスラム国は、このテロ行為の犯行を認めている。
この事件に先駆けて、米国は警告を発していた。米国大使館は3月7日に、過激派がモスクワでの大規模集会を標的にする可能性があるとし、米国市民に大規模集会への参加を避けるよう勧めていた。
米国大使館は、どのような攻撃が予想されるかや脅威の詳細については言及しなかった。ロシア連邦保安庁は、イスラム国のアフガニスタン支部ISIS-Kによるモスクワ南西部のカルーガ地方にあるユダヤ教会堂への攻撃を、数時間前に未然に防いだと発表していた。
ISIS-Kがロシアを標的にする理由に関する情報は、深刻な国際的な関心事となっている。
ISIS-Kの概要
イスラム国ホラサン州(ISIS-K)は、イスラム国(IS)が中央アジアおよび南アジアに宣言した支部であり、2014年末、アフガニスタン東部に現れた。イラン、トルクメニスタン、アフガニスタンの一部を領域としている。
その行為は過激で残虐だ。
ISIS-KはISの中でも特に活動が活発な支部の一つであり、2018年にはメンバーの数がピークに達したが、それ以降は減少傾向にある。
米国は、ISIS-Kを依然重大な脅威と捉えている。今年3月、米連邦議会で米国中央軍の司令官マイケル・クリラ将軍は、ISIS-Kは欧州やアジアでの攻撃作戦能力を迅速に高めていて、6か月以内に、アフガニスタン外で米国や西側諸国の利益を警告なしに攻撃できる能力を備えるだろうと予測していた。
しかし、米国本土への攻撃の可能性については低いとしていた。
米国は、2021年のアフガニスタン撤退後、ISIS-Kを含むアフガニスタンの過激派組織に関する情報収集能力が低下している。米軍は予想される攻撃の大まかな概要は把握できるものの、撤退前のような詳細な情報を得ることができなくなっている。
ISIS-Kの攻撃事例
ISIS-Kは、アフガニスタン国内外での攻撃活動において、イスラム寺院を含む様々な対象を狙っている。
2021年、米軍がカブールから撤退する途中に、ISIS-Kはカブール国際空港で起こった爆発攻撃に関与した。米軍は13人の米兵を含む多くの犠牲者を出した。
また、2022年9月には、カブールのロシア大使館で発生した自爆テロの責任を主張した。今年初頭にはイランでの2件の爆発を引き起こし、約100人が亡くなったと報じられている。
ISIS-Kがロシアを狙う背景
3月22日にロシアで発生したISIS-Kによる攻撃は、ロシアに対する敵意の高まりを示している。
専門家たちは、ISIS-Kが近年、ロシア及びその指導者であるプーチン大統領への反対姿勢を鮮明にしていると分析している。
ワシントンのスーファン・センターのコリン・クラーク氏は、ISIS-Kがプロパガンダを通じてプーチンを批判し続けていると述べている。ウィルソン・センターのマイケル・クーゲルマン氏は、ISIS-Kがロシアをイスラム教徒に対する圧制の共犯者と見なしていると指摘している。
クーゲルマン氏によると、中央アジア出身でモスクワに不満を抱く武装勢力もISIS-Kに参加しているとのことだ。
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