今月2日、中国・貴州省の省都である貴陽市で無許可での路上販売などの取り締まる「城管(治安当局者)」に拉致された障害を持つ露天商の男性が死亡したことが分かった。
この件に関する現地当局の声明に対し「不服」であるとして、死亡した男性の遺族らは「納得のいく説明と正義」を求めて、現地の警察署前などで抗議し、ネットを通じて助けを求めている。
死亡した露天商の男性、王さんの娘と思われるネットユーザーによると、王さんは果物屋台を営む障害者だった。
「今月2日午前9時に、城管は父親(王さん)の果物屋台を取り上げた後、父を強制的に連行した。連行を阻止できずその場にいた母と姉は2回も110番通報するも、公安は『管轄外だ』との一点張りで全く取り合ってくれなかった。父の拉致から約6時間経った午後3時、家族は警察から『男はいま葬儀場にいる』と告げる連絡を受け取った」
「ついさっきまで元気だったのに、なぜ死んだのか」、王さんの遺族は地元警察署の前で「納得のいく説明」を求めて抗議をするも、誰一人対応してくれる人はいなかったという。
遺族はこの件をネットに投稿し、「助けてほしい」と動画の拡散を懇願している。
遺族が警察署前で抗議する様子を映した動画がネットで拡散されて注目されると、世論の圧力によってか、現地警察は翌日この件に関して「説明」する声明を発表しているが、この声明について「まったく筋道が通らない」とネット上で批判の的になっている。
現地警察が発表した声明の内容はおよそ以下の通り。
「4月2日午前、法執行者(城管)は路上販売を行っていた王さん一家に対し、『路上販売をやめるよう』説得し、その商品に対して保全の措置をとった。ところが、王さんは法執行車(城管が乗る車)の後部座席へ乗り込んできた、何が何でも下車しようとしなかった。法執行車が所轄部署へ戻る途中、王さんは嘔吐をしはじめたため、法執行者は110番通報をした。警察が駆け付けた後、王さんの嘔吐の状況はさらにひどくなったため、救急車を呼んで病院に搬送したが、救命措置のかいなく12時40分ごろに死去した」
ご覧の通り、遺族が指摘する「強制的な連行」を、現地警察は「相手が自ら法執行車の後部座席へ乗り込んできては、何が何でも下車しようとしなかった。(仕方ないから)そのまま載せて署へ戻った」ということに置き換えている。
また、王さんに嘔吐の症状が現れた後の城管の対応に関しても、ネット上では批判が殺到している。
「なぜ真っ先に呼ぶのは救急車ではなく、警察なのか。また死後、家族の同意もなしに、直接葬儀場送りにしたのはなぜか、何を隠したいのか」
さらに、「露天商の突然の嘔吐の原因」についても、ネット上では議論の焦点となった。
「やはり城管による暴行がもたらす脳震盪か何かを起こしたための嘔吐ではないか」と推測する人が多い。
「いったい、車内(パトカー)で何が起きたのか」「少しでも人間の心のある人であれば障害者に手出しはできない」など、城管の行いに非難の声が殺到している。
「城管」は制服を着た暴力団
中国には無許可での路上販売などの取り締まりなどを主な任務としている「城管」という公的な組織がある。しかし「城管」の実態はというと、町のゴロツキを雇って制服を着せたような連中であり、非常に威圧的で、その「公務」は暴力そのものである。
さらには職務にかこつけて、売り物をごっそり奪い取っていく強盗まがいのことも平気でする。なかには、路上販売者を刃物で脅して殴打、恐喝することも平気で行う不法者も少なくなく、その横暴なふるまいから、市民の反感や恨みを買うことも多い。
そのような「城管」は、いまや中国では「制服を着た暴力団」の代名詞となっている。
もちろん個別的な「城管」の資質の問題もあるが、そもそもそんなゴロツキ同然の、暴力集団の代名詞にもなっているものたちを「公務」に就かせている政治体制に対して、市民の不満はもはや限界に近くなっていると言ってよい。
英語に「It is the last straw that breaks the camel’s back」という諺(ことわざ)がある。「ラクダの背骨を折るのは最後の藁だ」という意味である。
軽いワラ1本であっても、その1本で荷重に耐えられる限界を超えた時、ラクダの頑強な背骨も折れる、というのだ。
民衆の不満が積もりに積もって限界を超えたとき、その火種は、中国全土を巻き込む中共解党への反対運動のきっかけにもなりえる。
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