EU商工会議所が発表した最新の「2024年の欧州企業の中国ビジネス信頼度調査」によると、中国市場での欧州企業の投資信頼度は過去最低にまで落ち込んでいる。
多くの企業がビジネス環境の悪化と規制の障壁に直面しており、経済の不安定性と政策の不透明性が中国市場への信頼を損なう一因となっている。
EU商工会議所の5月10日発表の最新報告書によると、コロナ禍後の2023年、中国の国境開放後も欧州企業の中国市場への信頼は下落を続け、かつてないほど低い水準にまで落ち込んでいる。多くの企業が、中国でのビジネス環境が以前よりも難しくなったと感じている。
具体的には、消費の停滞、過剰な生産能力、不動産市場の持続的な問題、市場へのアクセスと規制の障害など、中国の根本的な問題が欧州企業にマイナスの影響を与え続けているのだ。
EU商工会議所は1月中旬から2月初めにかけて529社を対象に調査を実施した。それによると68%の企業が中国でのビジネスが以前よりも困難だと感じている。これは過去最高を更新した。さらに、55%の企業が中国経済の減速をビジネス上の主要な課題として指摘しており、昨年と比べて19%増加している。
EU商工会議所の会長、イェンス・エスケルンド氏は10日、「私たちの調査の歴史で、一年という短期間に19%も増加した例は見たことがない」とメディアに語った。
市場への参入の難しさや規制の障壁により、58%の企業がビジネスチャンスを逃していると報告。また、44%の企業が今後2年間の収益見通しに悲観的で、これは過去最悪の水準だ。楽観的な業務展望を持つ企業は昨年より23ポイント減少した。
報告書によれば、欧州企業のビジネス戦略が中国経済に影響を及ぼし、経済的困難をさらに深刻にする可能性がある。13%の企業はすでに中国から撤退するか撤退を決めており、12%は投資を他国にシフトすることを計画している。
エスケルンド氏は「企業が中国市場から完全に手を引いているわけではなく、他国が中国に対して競争力を増している」と述べている。
欧州企業は中国の過剰な生産能力や成長の停滞に苦しみ、収益が下がっていると感じている。欧州商工会議所上海支部のカルロ・ダンドレア会長によると、上海の欧州企業の一部は資金回収の遅延に直面している。
また、中国共産党政府は中国の製造業の成長を促しているが、国内需要を刺激する策が不足し、企業は生産過剰が利益率を圧迫することを懸念している。
調査の対象企業の3分の1以上が中国の過剰生産に苦しんでおり、10%は将来に同様の問題を予測。70%以上が価格の下落を指摘し、15%は2023年中国で損失を出している。
EU商工会議所会長エスケルンド氏は「中国企業も厳しい状況に直面している」と指摘した。
中国市場での課題
「中国市場で直面する課題が利益を上回り、欧州企業は事業縮小や野心を抑える方向に動きつつある」「中国政府はビジネス環境の改善を表明しているが、信頼を取り戻すための実際の行動が必要だ」とエスケルンド会長は商工会議所のプレスリリースで述べている。
ローランド・ベルガーの共同代表、デニス・デプー氏は、欧州企業が直面する不確実性は経済の不安定性と政策の不透明性に起因していると指摘。「経済の不安定性は管理可能だが、予測困難な政策は中国市場への投資の魅力を損なうリスクがある」と述べている。
2024年初頭に中国共産党が発表した成長率は5.3%で、主にインフラ支出と製造業への投資によるものだ。エスケルンド会長は
「外資系企業にとってGDPの内訳が重要で、製造業投資の増加だけでは利益につながらない。国内消費が成長を牽引するなら、それはポジティブなサインだ」と述べている。
中国の発展への疑念、過去最高に
EU商工会議所の最新調査によると、過去最高の割合で企業が今後2年間の成長を疑問視している。規制緩和への期待も最低水準に落ち込んでいる。「これらの問題は依然として解決されていない」と商工会議所会長は指摘する。
「現地市場の圧力や需要減少が長期化する可能性があり、これが企業の投資や戦略に影響を及ぼしている」と彼は警鐘を鳴らしている。
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