近年、日中関係は悪化傾向にある。新たな調査によれば、外交面での緊張再燃に加え、商業リスクの増大や市場シェアの低下が、日本企業の中国製造および中国市場への依存縮小を加速させているという。現在の日中間の緊張は、あらためて中国での事業展開のリスクを企業に突きつけている。
日経アジアが11月26日に報じたところによると、日本の帝国データバンクが先週発表した調査では、海外事業を持つ企業のうち、中国を最重要市場とみなす企業は16.2%にとどまり、2019年の23.8%から大幅に低下した。同時に、中国を最重要販売市場とする企業の割合も25.9%から12.3%へと半減している。調査は10月20日から31日にかけて実施し、1908社が回答した。そのうち59%は従業員1千人以上の企業である。この変化は、近年の対中貿易額の減少傾向とも一致している。
日本の対中輸出入はともに縮小
2024年、日本の対中輸出は3年連続で減少した。日本貿易振興機構(JETRO)によれば、2024年の対中輸出額は2021年比で24%減少した。とりわけ自動車部品の輸出は3年連続で二桁減となり、日本車の中国新車市場シェアは半減して11.2%となった。これに対し中国国内ブランドが市場の約3分の2を占めている。また、産業用ロボットなど「特定機能機械」の輸出も3年連続で二桁減となった。
2021~24年にかけて、日本の対中輸入も10%減少した。2024年には、中国からのノートパソコン輸入シェアが前年から4.3ポイント低下して94.4%となる一方、ベトナムのシェアは大幅に増加した。中国からのスマートフォン輸入シェアも1.8ポイント低下して87.7%となり、その分ベトナムやインドのシェアが伸びている。
多くの日本企業が中国依存を縮減
現在、中国共産党(中共)は11月7日に高市早苗首相が国会で述べた「台湾有事」発言を受け、日本への渡航・留学自粛を中国国民に呼び掛け、日本産海産物の輸入禁止措置をあらためて発動するなど、中国人を政治的に利用する姿勢を強めている。こうした一連の行動は、中国とのビジネスリスクを浮き彫りにした。
もっとも、日本のいくつかの業界ではすでに市場・供給網の多元化が進められてきた。観光分野では、北海道における中国本土・香港からの観光客の割合が2019年の42%から今年8月には23%に低下しており、現在は韓国からの旅行需要が主導しているという。
ベビー用品大手ピジョンは、インドや欧米市場への投資を拡大し、中国依存の軽減を図っている。
また、ロイター通信が11月初旬に報じたところによると、世界最大の自動車メーカーであるトヨタや、インド市場で約4割のシェアを持つスズキは、それぞれ約110億ドル規模の投資をインドで実施すると発表した。これによりインドの製造・輸出能力を強化する狙いである。
本田もまた、計画中のEVの生産・輸出拠点としてインドを活用する方針を示している。複数の業界幹部は、インドの低コストと豊富な労働力、モディ政権による各種インセンティブが、中国市場および中国の生産基地から重心を移す決定的な要因になっていると指摘する。
経済産業省が2025年1月に公開したアジア投資動向報告によれば、日本のアジア地域への海外直接投資のうち、中国向け投資残高はパンデミック以降減少している。報告では、環境規制、エネルギーコスト、人件費の変動などが、企業に工場の配置見直しを促していると指摘している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。