松原仁参院議員(無所属)は外務委員会で、トルコ政府がテロ組織と認定するクルド労働者党(PKK)の活動家が日本国内で活動している可能性について政府の対応を質した。警察庁は我が国でもPKKを国際テロリストに指定しており、必要な情報を収集し分析すると述べた。
政府によれば、PKKは国連安保理決議を踏まえ、日本でも国際テロリストとして指定され、財務省の資産凍結対象に指定されている。公安調査庁は「トルコ地域テロ情勢」のなかで、PKKについて記載している。
日本国内でPKKの旗
松原議員は8日、日本国内の一部地域では、PKKの旗を掲げその発展を祝すような民族祭が催されたとの情報があると指摘。PKKの活動との相関性について質問した。警察庁は、「必要な情報について収集・分析を行っているが、個別の団体や個人については差し控える」と述べた。
続けて松原議員は、トルコ政府がPKKに資金提供しているとしてテロ組織支援者と認定し、トルコ国内の資産を凍結した日本の一般社団法人と関連の個人について「日本の警察庁はテロ組織支援者という扱いをするのか」と追及。警察庁は、「警察は事件として取り上げるべきものがあれば、証拠に基づき適切に捜査する」と答えた。
PKKは国連安保理決議を踏まえ、我が国の法律に基づく国際テロリストに指定されている。松原議員は「我が国にあるPKKの財産は凍結されるのか」と質した。財務省はPKKが外為法に基づいてテロリスト等に対する資産凍結等の措置の対象になっており、「同団体への送金は許可されない」とした。
また、松原議員はPKKはEU、米国以外にも豪州やニュージーランド、カナダにおいてテロ組織として制裁対象となっていると指摘。「PKKによる暴力活動は日本で表出してはいないが今後のリスクはあると強調した上で、テロ対策について上川外相の所見を求めた。
上川外相は、「注意深く監視していかなければいけない」と述べるにとどまり、具体的な対策には言及しなかった。
公安調査庁が発行する「国際テロリズム要覧」(2022年度版)によれば、PKKは1978年に設立されたマルクス・レーニン主義を標榜する分離独立組織。トルコ国内で2015年7月以降も治安当局等を標的としたテロを継続しており、トルコ政府との衝突で多くの犠牲者を出している。
最近の動向でも、ロイター通信は5月3日、トルコ軍がイラク北部のハフタニン、ガラ、ハクルクの各地域で、PKKのメンバー32人を殺害したとトルコ国防省の発表を引用して報じた。トルコ政府はイラクへの越境攻撃を行なっており、両国の緊張は高まっている。
公安調査庁によれば、PKKは、麻薬取引や人身売買、密輸、金品の強要、誘拐等によって活動資金を獲得しているとされ、欧州での資金獲得活動も行っている。また、トルコ国内だけでなく、シリアやイランのクルド人も、欧州など海外各地でリクルートしている。
PKKをめぐる問題について、3月22日の参院法務委員会でも取り上げられている。
和田政宗議員(自民党)は、昨年11月にトルコ政府がPKKの支援者として日本国内の2団体と6人の資産凍結を発表したことを取り上げ、警察庁がこれらの団体・個人を摘発していない理由を問うた。警察庁は、国際テロ防止の観点から必要な情報収集を行っているが、個別の団体・個人については答えを控えると述べた。
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