中国共産党(中共)は先月、いわゆる「台湾独立」運動への取り締まりを強化する新たな規則を発表し、その中で最も厳しい刑罰として死刑を含むことを明らかにした。この発表を受け、中国で事業を展開する外資系企業の中には、台湾出身の従業員を中国から撤退させることを考え始める動きが見られる。
中共は6月末に「台湾に関する22の提言」を公表し、特に「台湾独立」を支持する者に対しては、出席を必要としない裁判によっても、死刑を含む刑を科す可能性があると述べた。
7月4日には、ロイター通信が情報筋4人の話として伝えたところによると、北京が新しい方針を打ち出した後、中国本土で働く台湾人や多国籍企業は、台湾人スタッフの中国における勤務のリスクと、中共の新たな方針が彼らに及ぼす影響を再評価し、対応策についての協議を開始したとのことだ。
台湾励志協会(TIA)の執行長、頼栄偉氏は以下のように指摘している。
「中国での政治リスクは、想像を超えるほど高まっており、その主な原因は、彼らが制定した法律が非常に曖昧な定義をしているため、中国に足を踏み入れると、容易に法律違反になるリスクがあるのだ」
さらに、「基本的に、台湾人スタッフを雇っているかどうかに関わらず、外資系企業は中国でのビジネスが、政治的リスクにさらされている。反スパイ法や秘密情報保護法などが、そのリスクの存在をはっきりと示している」と話している。
パーキンズ・コーイー法律事務所の北京オフィスパートナーであるジェームズ・ジマーマン弁護士は、ロイター通信に対して、企業からの相談があり、従業員が中国で直面するリスクの評価を求められていると述べた。
ジマーマン氏は、中国の多国籍企業の中には、ソーシャルメディアへの無害な投稿をしたり、台湾の選挙における政党や候補者への投票することなどが、中国共産党によって「台湾独立」活動に関与していると受け取られる可能性があるなど、そうしたグレーゾーンが存在するのではないかと懸念する企業もあると述べている。
頼栄偉氏は次のように述べた。
「この問題は誰にとっても関りのあるものだ。つまり、台湾人だけでなく外国人にも影響が及ぶということだ。中国の経済が不安定で、社会にも緊張が走っている状況で、中共は政権の安定を脅かされることを恐れている。外部の勢力が交流を通じて内部に入り込み、政権を崩壊させる可能性を危惧しているのだ。このことから、中共が現在、非常に不安定な状況にあると言えるだろう」
匿名を条件に話した二人の企業幹部によると、この問題の敏感さから、中国で活動している外国企業の中には、従業員と安全について話し合う会議を開いたところがあるそうだ。
頼栄偉氏はさらに、「このような状況は経済成長にとって不利だ。企業は利益を求めてここに来ているが、社会や政府が歓迎していない場合、ここに留まる理由はなくなる。その場合、東南アジア諸国への移転も選択肢になる。多国籍企業は世界各地でビジネスを展開する自由があり、リスクを常に評価している。リスクが利益を超えた場合、企業は工場やオフィスを他の地域へ、特に法の支配と公平が守られる民主的な国へ移すことが可能だ」と述べた。
また、他の情報源からの報告によると、中国に滞在している台湾籍の従業員の中には、中国を去る選択を受け入れた人たちもいるようだ。
中国投資被害者連合の理事長である高為邦氏は、「経済状況が悪化し、失業問題が深刻化している中、台湾のビジネスマンが中国に留まることは危険だと考えている。混乱が絶えない国には近づかず、危険な場所には行かないようにと常に警告している。そのため、移動が可能な台湾の経営者や市民には、早急に行動を起こすよう呼びかけている」と述べている。
台湾政府の最新調査によると、2022年までに約17万7千人の台湾人が中国大陸で働いていることがわかった。台湾人は中国文化に詳しいため、多くの国際企業が中国で彼らを採用している。
高氏はさらに、「台湾のビジネスマンだけでなく、中国人も出国を考えるべきだと思う。中共を打倒できなければ、自分たちの安全のためにも早めに国外へ出るべきだ。実際に、多くの中国人、特に裕福な層が自費で南米へ逃れ、そこからメキシコを経由して米国へ入国している。このような人々の数は、既に10倍以上に増えている。従って、中国からの脱出は、もはや公然の事実となっている」と述べた。
多数の台湾の事業家たちが中国の経済成長に大きく寄与しており、統計データによれば、1991年からの台湾企業の中国への投資総額は2000億ドル(約32兆円)を超えているとされている。
高氏は次のように述べている。
「これは統治者たちがバカだということだ。国の衰退と敵意の創出は、彼らの政治のもとで生じている。このような状況を招いたのは一体誰だろうか? それは彼ら自身だ。彼らが作った法律の目的は何だろうか? それは台湾人が中国での生活に恐怖を感じ、結果的に去るほかなくなるように仕向けることだ。台湾人と企業が去ることになれば、その国はもっとも絶望的な事態に陥るだろう」
台湾の大陸委員会は、ロイターへの声明で、「台湾政府として、中国大陸で働く台湾のビジネスパーソンや台湾出身の労働者に対し、個人の安全にさらなる注意を払うよう促している。安全上のリスクが実際に増加していることを認識している」と述べている。
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