今月19日、中国メディア「読特新聞」は「過去に無償献血を8回したのに、必要になった時過去の献血が無効と告げられる」、「事件」を取り上げた。
「被害者」は河北省廊坊市に住む李さん。李さんは2011~20年の間に計8回無償の献血をしており、最後の献血(400ml)は2020年10月15日だった。
しかし、「入院中に緊急な輸血が必要となった時、『最近、あなたは献血をしていないため、献血証が期限切れになった。無効だ』と告げられ、本来ならば優先的に受けられるはずの輸血を受けられなかった」という。
「献血証が期限切れになる」ことはあるのか? 中国メディアの取材により「期限切れになることはない」ことがわかった。
つまり、「期限切れになった」というのは病院側の一方的な言い分でしかないのだ。
このニュースが報じられると、世論の怒りを引き起こした。
「自分も李さんと同じ無償献血をしたのにいざという時には認めてもらえなかった」というユーザーもおり、なかには、「高価な血液を買えない患者家族が、献血を申し出ても、血液を買うのとほぼ変わらない費用を要求される」ケースもあるという。
経済不況の中国で、報酬を得るために血を売る若者が後を絶たない。今年1月、短期間で売血を繰り返した男性が急死している。
庶民は「いざ、自分が必要になる時のため」、自分や家族が優先的に輸血を受けられるよう普段から無償献血をする。そして、お金のない人は「血を売る」。しかし、特権階級は庶民と異なる待遇を享受している。
「血槽姐事件」
昨年末起きた、「血槽姐(邦訳:血流し姉さん)」事件」は、中国全土を震撼させた。
後に「血槽姐」と呼ばれるようになった、特権階級のお嬢さまの余さん(27歳)は、交通事故に遭って重傷を負い、緊急輸血を必要としたが、現地の病院には血液のストックが足りない。
この事態に、彼女の夫は親戚の「おばさん」を通じて「上海市衛生健康委員会」に連絡をとり、彼女のいるチベットの阿里地区の全公務員、つまり警察、消防隊員、軍隊の全員に「献血」をさせた。
輸血の後、女性の父親は百万元(約2千万円)以上を払って飛行機をチャーターし、彼女を成都の病院へ運ばせた。空路による移動時間は3時間未満であったが、移動中も「優先通路」など各種の特別待遇を受けたという。
阿里地区の公務員全員による献血、チャーター機による搬送、病院での高度な治療などの大救出劇を経て、女性は最終的に一命をとりとめた。
女性の病院でのカルテが、ネットに流出している。事故で負った重傷というのは「一般の人だったら8回は死んでいる」というほど重大な程度であったらしく、まさに奇跡的生還と言えるものだった。
この救命劇の一部始終は、彼女が運び込まれた四川省の「華西医院」にある「党建設コーナー」に「ポジティブ・ニュース」として掲載された。
しかし、そんな中共宣伝コーナーに並べられた「ポジティブ・ニュース」をみた一般の中国人は、誰しもその心に、不条理に対する嫉妬と怒りを覚えたはずだ。
それは、このニュースが喜びを共感できる美談では決してなく、今の中国に厳然と存在する「特権階級と庶民の間にある巨大な溝」をはっきり映し出す鏡となったからである。
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