政府はエネルギー基本計画の案をまとめ、25日の審議会で、実質了承を得た。2040年度には全体の4割から5割程度に拡大して最大の電源とする方針だ。
新しい計画案では、現在2割あまりを占める再エネを2040年に「4割から5割」と、最大の電源に、1割弱の原子力を「2割程度」に増やし、やく7割を占める火力を「3割から4割程度」に減らすと記されている。
再生可能エネルギーのなかで、太陽光は全体の22~29%程度、風力は4~8%程度、水力は8~10%程度、地熱は1~2%程度、バイオマスは5~6程度としている。
原子力について、「依存度を低減する」という文言は削除され、再生可能エネルギーと「ともに最大限活用」していく方針だ。
政府は、今回の案をパブリックコメントに付した後、来年3月までに閣議決定する予定だ。
増加する電力需要への対応
AIの普及やデジタル技術の進展を背景に、今後の電力需要は増加すると見込まれている。今回のエネルギー基本計画は、温室効果ガスの排出削減と電力需要の増加に対応するための内容とされている。
しかし、再生可能エネルギーには課題も残る。発電量が天候に左右される上、火力発電に比べて現状ではコストが高い。また、使用されている太陽光パネルや風力タービンの多くが中国製であることから、経済的な懸念とともに国家安全保障上のリスクも指摘されている
また、福島第一原発事故以降、原子力に対する国民の不安や反対意見は根強い。安全性の確保と国民の理解を得ることも大きな課題になる。
政府の試算では、2040年の総発電量は 1.1兆~1.2兆kWhと見込まれ、目標とする「2割程度」の発電量は 220TWh~240TWhになる。
現在の日本の原子力発電所(出力100万kWクラス)は、稼働率80%と仮定すると、年間 7TWh(70億kWh) が発電可能。目標の2割程度の発電量か稼働率80%の年間発電量 7TWhを除すると必要な原子力発電所の基数は31〜35基となる。
2023年度の原子力発電の割合は8.5%だった。原子力産業新聞によると、2023年の国内原発の平均設備利用率は28.0%(対前年比9.3ポイント増)、総発電電力量は810.8億kWhだった。仮定の80%稼働率よりもはるかに低い。
現在、日本には約30基の原発があるが、その中には再稼働待ちや廃炉予定のものが含まれている。老朽化や廃炉計画を考慮すると、既存の発電所では不足する可能性が高い。原発の新設や次世代炉の開発には多額の費用がかかり、経済的な負担も課題として残されている。
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