「法律は死んだ」
中国において、「法律は死んだ」この言葉は、不公を受けた陳情民をはじめ、どの人権弁護士も口にする言葉だ。
下に付けた動画に映るのは、北京市の高等裁判所前で「白と黒の紙」を無言で回す市民。動画投稿者も書いたように「この市民が伝えたいことは黒白を転倒する(顛倒黑白)」と思われる。
中国語で「黑白」とは「是非」や「善悪」を表している。「黒白を転倒する」というと、是非善悪をあべこべにする、善悪を区別しないということだ。
(北京市の高等裁判所前で『白と黒の紙』を無言で回す市民)
法廷
司法を担当する裁判所は「法律の番人」と呼ばれる。しかし、「法律を守るべき法廷で、法律が踏みにじられている」——これは中国の現実だ。
中国の司法は権力の道具に成り果て、法廷の場で弁護士が暴行される事件が後を絶たない。
3月13日、河南省開封市杞県(き-けん)の裁判所で女性弁護士・邵玉娟(しょうぎょくけん)さんが司法警察員から暴行を受けたことがわかった。
きっかけは意見の不一致による弁護士と書記官との口論だ。すると、書記官は司法警察員3人を呼んだ。司法警察員たちは弁護士の携帯を押収して、手錠をかけ、法廷内で一度殴打した後、オフィスに連れて行き、そこでも引き続き暴行を加えた。
暴行被害を受けた弁護士は、自身のSNSに負傷した様子を公開しており、その弁護士仲間である張新年(ちょうしんねん)氏によると、「彼女が2度にわたって殴打されたその一部始終を、裁判長はすぐそばで見ていたが、止めなかった」という。
また、「邵弁護士は殴る、蹴るなどの暴行を受けて身体に多くアザができ、歯もぐらついた。顔は地面に押し付けられたことが原因で腫れている」という。

氷山の一角
2024年7月1日、北京の弁護士事務所「北京市漢鼎連合律師事務所」所属の何智娟(かちけん)弁護士は、貴陽市の法廷「貴陽市雲岩区法院」の休廷時間(撮影可能)に写真を撮影した際、約8人の法廷警察員によって、押し倒され携帯電話を奪われる事件が起きた。何弁護士は負傷した。
(何智娟弁護士が法廷で押し倒される時の様子、2024年7月1日、貴陽市の法廷)
2022年1月13日、家宅の強制取り壊し関連の案件を代理する人権派弁護士・王宇(おうう)氏は蘇州市の裁判所で法廷警察によって暴行され、肋骨や腕、腰など体中負傷した。暴行受けたことについて110番通報するも、警察は「法廷警察による正当な法執行だ」として、受理しなかった。
このように、法廷での暴力は、中国でよく起きていること。法の支配が崩れた中国では、弁護士や活動家といった当局にとっての「厄介者」だけでなく、一般市民も日常的に権力の横暴に晒されている。
法が機能しない国では、市民の権利など守られるはずがない。

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