激変する中国 「正義を訴えた者こそ潰される」──中国の現実を生きる

声を上げた代償は「人生そのもの」 中国女性の12年闘争が突きつける国家の本質

2025/07/25 更新: 2025/07/25

「中共の公安・検察・裁判所というのは、庶民のために問題を解決する機関ではない。逆に、問題を訴えた者を潰すための組織だ」――高新娟。

土地や家を奪われ、暴力に晒され、人格までも「精神病」に仕立てられる──。江蘇省江陰市の女性・高新娟(こう・しんけん)さんは、政府による土地収用と医療事故への補償を求めて12年以上にわたり訴え続けてきた。しかし待っていたのは、正義ではなく監視、暴力、そして徹底的な社会的排除だった。

2013年、高さんの村は市の再開発計画により、強制立ち退きの対象となった。高さんの自宅は、本来500平方メートル以上あったにもかかわらず、350平方メートルと過少に査定された。村民たちがこうした過少査定に反発すると、待っていたのは容赦ない暴力と報復措置だった。村は封鎖され、停電・断水が常態化。圧力をかける村委員会は「サインしなければ子どもを殺す」と脅すまでに至り、その苛烈さは限界を超えていた。

 

イメージ画像。2023年8月12日、重慶市北碚区歇馬街道石盤村の村民・李忠秀さん一家の土地と家屋が、強制収用される現場。(大紀元合成)

 

高さんは不当な補償に納得できず裁判を起こそうとしたが、地元裁判所は訴えを受理せず。2024年10月、広場で市民に助けを求めたところ、「社会秩序の攪乱」として公安に拘束された。拘留中、彼女は絶食で抗議。釈放後に戻ると、パソコンやスマホのデータはすべて消され、電動バイクも盗まれ、重要書類も消えていた。

昨年12月には北京で陳情を試みたが、到着直後に地元公安の私服警官に拉致され、脊椎損傷、椎間板の断裂、肩の脱臼などの重傷を負わされる暴行を受けた。偶然、通行人が撮影した写真が唯一の証拠だったが、地元公安は「北京のことは関係ない」と立件を拒否し、治療費も全額自己負担となった。

さらにSNSで助けを求めると再び1週間拘留され、拘留期間中に不明の薬物を飲まされ、血便が3日間続いた。釈放後、自宅の証拠類は再度すべて破壊されていた。

 

イメージ画像、中国の公安。(Lintao Zhang/Getty Images)

 

生活困窮に陥った高さんは共産党の監察機関である紀律委員会に訴えたが、「民政局へ行け」とたらい回し。民政局では「お前が生活保護を受ける資格などない」と怒鳴られて門前払いされた。最後の望みをかけて無錫市の中級法院に強制収用の不当を訴えたが、ここでも門前払い。

北京の弁護士に高額の報酬を支払って依頼したものの、裏切られた。弁護士は高さんの息子に「母親は民事能力がない」との申請書を書かせ、精神病院への強制入院を画策。裁判官までもが医師に電話で「高を精神疾患に認定しろ」と指示する異常事態となった。

夫との離婚裁判でも同様の構図が繰り返された。裁判の途中で弁護士に騙され訴えを取り下げさせられた結果、家族名義だった2軒の家は夫がすべて売却。高さんには一円の財産も残らなかった。

さらに遡ると、1999年には江陰市の病院による誤診で妊娠5カ月の時に強制中絶を受け、身体には深刻な後遺症が残ったままだ。

「私が公安に送った書簡は43通以上。でも中共の公安・検察・裁判所は、庶民のためにあるのではない。問題を訴えた者を潰すための機関だ」──それが、彼女の結論である。

いまも彼女の戦いは続いている。しかし、その声が届く場所はどこにもない。

声を上げる者こそ潰される。それが、中国という国家の現実である。正義なき国が、ひとりの女性の人生をこうして踏みにじっていったのだ。

 

中国の庶民の間で、宋代に実在した名裁判官「包公」を祀った廟である包公祠に跪いて拝み、ひたすら「自身が受けた冤罪や不公正な扱いによる被害」を泣きながら訴えることが一種のブームとなって巻き起こっている。画像は2024年3月10日、河南省開封市にある「包公祠」の広間で、包公の座る裁判官席に向かって跪いて号泣する女性。(SNSより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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