日本銀行が7月1日に発表した「6月の全国企業短期経済観測調査(短観)」によると、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス13となり、前回3月調査のプラス12から1ポイント上昇した。これは2四半期ぶりの改善である。
業況判断指数(DI)は、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた数値で、プラスであれば景況感が良いと感じる企業が多いことを示す。今回の調査は、5月28日から6月30日にかけて全国8,911社を対象に実施され、回答率は99.2%にのぼった。
改善の背景には、原材料や人件費などコスト上昇分の価格転嫁が進み、企業の収益が増加したことがある。特に、電気機械や自動車など一部の業種では、AI関連投資の堅調さや国内新車販売の底堅さも下支えとなった。一方で、米国の通商政策による不確実性の高まりが依然として業況の重しとなっているが、現時点で目立った悪影響は現れていないとの見方もある。
一方、大企業非製造業のDIはプラス34となり、前回調査(プラス35)から1ポイント下落し、2四半期ぶりに悪化した。特に小売業では、円安による原材料価格の上昇や人件費の高騰、商品値上げによる消費者の節約志向が強まり、企業マインドの重しとなった。
2025年6月16日・17日に開催された日本銀行の金融政策決定会合後、日銀は今後の見通しについて次のようにコメントしていた。
会合後に公表された声明によると、日銀は日本経済について「一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」との認識を示した。先行きについては、各国の通商政策など外部要因の影響で成長ペースが鈍化する可能性を指摘しつつも、その後は海外経済が緩やかな成長経路に復するもとで、日本経済も成長率を高めていくと見込んでいる。
特に、米国の関税政策や通商政策については「不確実性が極めて高い」とし、経済や物価への影響を引き続き注視する姿勢を明確にした。植田総裁は会合後の記者会見で、利上げの判断について「物価見通しの実現確度次第」と発言し、海外情勢や経済データの動向を慎重に見極める考えを示した。
また、長期国債の買い入れ減額ペースについては、市場の安定や予見可能性に配慮し、2026年4-6月期以降は減額幅を緩やかにする方針を決定した。中東情勢の緊迫化や原油高など、他の海外リスクについても注視していく方針であるとした。
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