習近平失脚説と長老・温家宝の台頭 党内長老が主導する退陣圧力

2025/10/10 更新: 2025/10/10

習近平の最高権力喪失や温家宝元首相による権力掌握、さらに四中全会を前にした中国共産党内での辞任圧力――中国共産党の権力バランスに大きな変化が生じており、政局の行方に注目が集まっている。

10月7日、中国国内外から伝わる二つの重要なニュースが関連し合い、中国共産党党首の習近平が既に最高権力を失い、北京で軟禁されている可能性があることが指摘された。このため、習近平は朝鮮労働党80周年記念行事への出席も困難な状況にあるとみられる。

同時に、外部情報筋によれば、元首相の温家宝が中国共産党内で臨時的に最高権限を手にしており、党組織内部のあらゆる公文書は温家宝の承認を経なければ送受信できないという状況にあるという。

さらに、党内の長老たちは「健康状態」と「年齢」を理由に、近日開催予定の第4回中央委員会総会(4中全会)で、習近平および蔡奇に辞任を求める動きを加速させている。

蔡慎坤氏の見解――習近平と蔡奇が年齢問題で退陣を迫られる可能性

独立評論家の蔡慎坤氏は10月7日、自身のYouTube番組で、信頼できる中国国内関係者からの情報として、習近平と蔡奇が年齢を理由に辞任を強いられる可能性について言及した。

蔡慎坤氏によれば、この情報は中共指導部の高官と長年親しく連絡を取っており、中国共産党の内情に精通する人物からもたらされたもので、複数のチャット画面のスクリーンショットも証拠資料として提供されているという。これらには、習近平と蔡奇に対し年齢問題を理由に政治の表舞台から身を引くべきだという議論が記録されている。

また蔡慎坤氏は「誰が習近平と蔡奇に退陣を迫っているのか。張又侠なのか、それとも現在の党内長老たちなのか、情報提供者も答えを持ち合わせていなかった」と述べている。

加えて、今回の情報では温家宝の特別な地位が強調されており、現在、共産党内部のすべての公文書の発信や決裁に温家宝の署名が必要とされている点が指摘されている。

一方、習近平と張又侠の関係はすでに修復困難な状況にあり、いわば「生き残りをかけた」対立に発展していると報じられる。

蔡慎坤氏は番組内で、「最新情報によれば、現在、張又侠と劉振立が軍の直接指揮を執っており、全ての軍権は彼らが掌握している。習近平は軍への影響力を事実上完全に失った。北京や中南海の警備も軍により厳格に管理されている状況である」と説明した。

ここでいう「最新情報」とは10月6日の動きを指す。蔡慎坤氏によると、軍の掌握とは中央警備局および北京警備区が防衛を担っている状況であり、これは中部戦区の管轄下にあるとされる。現時点で、中部戦区の司令官と政委は双方とも所在不明であり、同地域で誰が実際に指揮権を持っているかは明らかになっていない。

蔡慎坤氏は、習近平の権力が依然として強いか否かについては深く言及せず、むしろ習近平と蔡奇が年齢問題をめぐり党内上層部から度重なる追及を受け、近い将来に辞任を強いられる見通しが高いという点を強調したいと語った。

仮にこうした事態が現実となれば、中国政治は重大な転換点を迎えることになり、その推移は予測困難なものになる可能性があると蔡慎坤氏はみている。

今回、蔡慎坤氏による暴露内容のポイントは以下である。

第一は、温家宝が中国共産党の臨時最高権力を手中に収めているという点である。海外メディア報道によれば、今年6月末に中国共産党長老らが「党中央決策議事協調機関」を設置し、習近平および政治局常務委員会の権限を弱体化させた。この新機関の実質的運営を温家宝が司り、日常業務は汪洋前副首相が担っているとされる。

5月19日には、習近平が突然洛陽を訪問したが、これも温家宝側の意図的な手配によるものと見られており、習近平の影響力低下の兆候とされている。

中国古来の文化では、最高統治者は「太陽」に例えられ、洛陽という地は「太陽の沈む場所」を意味することから、歴代指導者にとって忌避される象徴的な土地である。毛沢東も一度も洛陽を訪れていない。毛沢東を範とする習近平が洛陽を視察したのは、自らの意思によるものではなかった可能性が高い。

第二は、習近平と蔡奇が健康や年齢を理由に辞任を求められる可能性が浮上している点である。過去の報道では、胡錦濤が健康上の理由から自主的な辞任を習近平に望んでいたとされ、円滑な権力移譲により党内対立の回避を目的としていたという。しかし、軍委員会副主席張又侠と劉源上将は習近平が素直に従わないことを懸念し、軍による圧力を強めた可能性がある。

蔡慎坤氏による暴露には「退陣を迫る」という表現があり、誰かが習近平と蔡奇に対し辞任の圧力をかけていることを示唆している。具体的な手法や背景は明かされていないが、両者が辞任を迫られているのは事実であると伝えられている。

ここから推察すると、張又侠の指揮する軍事力が、党内権力闘争で決定的な要素となっていることは明白である。

第三は、張又侠と習近平の関係が「生きるか死ぬか」の緊迫状況にあることである。これは、ここ1年の間に軍内部で続いた大規模な粛清と密接に関連している。

昨年の第3回中央委員会総会(3中全会)以降、失踪あるいは失脚した軍上層部はすべて習近平派閥出身である。名前が挙げられているのは、軍事委員会副主席の何衛東、軍事委員会委員の苗華、東部戦区司令の林向陽、政委の劉青松、西部戦区司令の汪海江、中部戦区司令の王強、政委の徐徳清などである。

第4回中央委員会総会の日程発表前日の9月28日、京港澳高速道路・保定から北京にかけて、大量の軍用車両が北京へ向かう様子がネット上で報じられた。推定100台以上の装甲車や物資輸送車、兵員輸送車、医療車などが連なり、少なくとも千人規模の兵士が移動していたとされる。

保定は第82集団軍の駐屯地であり、ここは張又侠の直轄部隊である。4中全会直前に第82軍の精鋭部隊が北京に動員されたのは、単なる治安維持ではなく、武力で習近平の自主的な辞任を保証する目的があったことは明白である。

また、習近平が多数の外交訪問を取りやめている事実も、同氏が既に最高権力を失い、辞任が近いことを示す兆候と考えられる。

李強が習近平に代わり訪朝 外交人事に見る中南海の急変

中国共産党外交部の報道官は10月7日、総理の李強が10月9~11日、中共党政代表団を率いて朝鮮労働党創建80周年記念行事に出席し、併せて朝鮮を正式訪問することを発表した。

本来、これは朝鮮労働党の80周年記念祝賀行事であり、中国共産党のトップである習近平が出席すべきものである。習近平が訪朝できない場合でも、党の業務を主管する政治局常務委員の蔡奇が代理で参加するのが通常の流れである。しかし中国共産党(中共)は、政府を主管する国務院総理の李強を派遣すると発表した。この事実は、習近平と蔡奇の双方が何らかの困難に直面し、すでに海外訪問ができない状況にある可能性を示唆している。

米国在住の政治評論家・唐靖遠(トウ・セイエン)氏は自身のメディア番組で、李強の訪朝は前例のない異常事態であり、その背後には尋常ならざる変化が生じていると述べた。唐靖遠氏の分析によれば、これまでのところ習近平は朝鮮訪問を決めていたという。金正恩は9月3日に中国の軍事パレードに出席し、習近平に大きな配慮を示した。習近平はその場で、朝鮮労働党80周年記念の軍事パレードに出席することを金正恩に約束した可能性が高い。その後、金正恩帰国から1か月も経たないうちに、朝鮮の外交部長が北京を訪れた。これは明らかに、当時習近平が行った口頭の約束を確認し、訪朝に関する具体的日程や詳細を詰めるための動きだったと考えられる。

唐靖遠氏は、もし9月3日の軍事パレードの際に習近平が金正恩の要請を断っていたなら、金正恩が自国の外交部長を再び北京に派遣することはあり得なかったと指摘する。ところが現在では、李強が朝鮮労働党の祝賀行事に出席することになっている。これは明らかに臨時の対応であり、その背後には非常事態が存在する可能性が高い。本来なら習近平の代理として蔡奇が訪朝すべきところ、蔡奇もまた訪朝していない。

唐靖遠氏はさらに、中国共産党高層で相次いでいる前例のない動きとして、習近平がチベット自治区および新疆ウイグル自治区の周年記念式典に出席した事例を挙げた。これらの行事は、従来党トップが出席することはなかったものである。また、習近平が建国記念日の祝賀スピーチにおいて、「台湾統一」に一切言及しなかった点にも注目している。唐靖遠氏はこれを、習近平が権力を失いつつある重大な兆候だと述べる。なぜなら習近平が三期目の続投を実現できた最大の前提条件は、党内保守派に対し「第三期の任期内、すなわち2027年までに台湾問題を解決する」と約束したことにあったからである。

唐靖遠氏は、「習近平が台湾統一についてもはや触れなくなったということは、三期目続投の最大の基盤、最大の切り札と大義名分が完全に失われたことを意味する。これは権力移譲や退任への布石ではないのか」と指摘した。

10月8日、時事評論家「牆內普通人(チャンネイプートンレン)」は自身のYouTube番組で、「10月10日に習近平が朝鮮の軍事パレードに出席しないのであれば、おそらく10月末の韓国・APEC会議にも参加できないだろう」と述べた。そして「温家宝がすでに習近平の行動を制限している可能性があり、習近平は自発的か強制的かは不明だが、4中全会で退陣する以外に道はない」との見方を示した。

結語

これら一連の動きから習近平の権力構造に亀裂が生じていることは明らかである。軍事権力から外交、常務委員会、さらには指導部の安全圏に至るまで、「権力移行」の兆しが顕在化しつつある。もし温家宝が実際に中共中枢の意思決定を再び掌握しているのであれば、今回の「4中全会を前にした権力再編」は単なる内部の清算にとどまらず、中共70余年の歴史の中で最も激しい権力移行となる可能性がある。

この嵐は最終的に習近平の失脚で終わるのか、それともさらに大きな政治的崩壊へと発展するのか、今後も引き続き追跡・分析を行う方針である。

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