中国では建国記念日(10月1日~8日)の長期休暇が終わった後、各地の工場で経営者が姿を消す「逃亡倒産」が相次いでいる。
「今年は逃げるのが早い」「休み明けに倒産した会社を何社見た」といった書き込みがSNSに広がり、社会不安が一気に高まった。実際、各地では「噂」が現実となり、帰省から戻った従業員たちが扉の閉ざされた職場を前に立ち尽くしていた。
以下に、本紙の取材などで明らかになった各地の状況を伝える。
浙江省嘉興市では、スーツケース製造工場の経営者が連休中に設備を持ち出し夜逃げした。工場はゴミだけが散乱し、従業員は一晩で全部なくなったと肩を落とす。
(経営者が連休中に設備を持ち出し夜逃げした後、ゴミだけが散乱する工場内の様子。2025年10月、浙江省嘉興市)
貴州省六盤水(ろくばんすい)市の製造工場で働いていた春明(仮名)さんは、10月8日、休暇を終えて出勤すると、工場はもぬけの殻だった。社長は「設備をカンボジアに移す」と言い残して姿を消し、連絡も途絶えた。従業員たちはただ呆然と立ち尽くすばかりで、未払いの給与は二十数人で計50〜60万元(約1千万円~1200万円)にのぼる。
経済の落ち込みは特に製造業の中心地・広東省で深刻だ。
東莞(とうかん)市では老舗家具メーカーが破産、債務は1200万元(約2億4千万円)に膨らみ、資産はわずか6万元(約120万円)しか残っていなかった。
(もぬけの殻となった事務所の内部、2025年10月)
佛山(ぶつざん)市の建材大手も10月上旬に突然閉鎖した。長年「資金は潤沢」と強調していた企業ですら、もはや資金繰りが立たなくなっている。
広州市のメディア関連会社では、休暇明けに社員が出勤すると事務所は空っぽだった。机もパソコンもなく、残っていたのは社長の古いスリッパだけ。社員は「会社が消えた、給料も未払い」と訴え、労働仲裁に駆け込んだが、支払いの見通しは立っていない。
(もぬけの殻となった事務所の内部、2025年10月)
零細企業や個人商店も打撃を受けている。湖北省武漢(ぶかん)のたばこ販売業者は「高級たばこは売れず、安物も仕入れが難しい。もう利益が出ない」と嘆く。
浙江省の竹製品ネット販売業者は「昨年より売上が半減した。5年やってきたが、今が一番きつい」と語る。
広州の電動バイク店主は「連休中5日間で売れたのは中古3台だけ。新車は1台も出なかった」と肩を落とした。
それでも政府は「一部の経営者が苦しんでいるからといって、全体を否定することはできない」と主張し、経済は好調だと言い張っている。
だが、どれほど粉飾の言葉を並べても、閉ざされた工場のシャッターは上がらない。
静まり返った街並みこそが、いまの中国経済の現実を物語っている。
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