混迷する首班指名 野党一本化に立ちはだかる政策の壁

2025/10/14 更新: 2025/10/14

公明党が自民党との長年の連立から離脱する決断を下したことで、次期首相指名選挙の行方が著しく不透明となった。斎藤鉄夫公明党代表は「今はあらゆる可能性の中から、最終的には党で話し合って決める」と述べ、野党党首への投票も「可能性の一つだ」と明言した。これにより、自民党の過半数割れが現実味を帯び、与野党双方が激しく水面下での調整を進めている。

自民党内では、林芳正氏を総務相に、小泉進次郎氏を防衛大臣に起用する人事案が調整されている。派閥をまたいだ要職人事を通じて党内の一本化を図り、首班指名での結束を固める構えだと考えられる。一方、立憲民主党の野田代表は、野党勢力が結集すれば自民党を上回る議席数を確保できると公言し、野党連携の実現に向けて主導権を握る姿勢を鮮明にした。

しかし野党間の政策を一本化することは容易なことではない。国民民主は、安全保障政策で自民党に近い立場をとる一方、立憲民主や共産など他の野党勢力とは、特に防衛費増額や抑止力の強化については慎重姿勢を崩していない。また、エネルギー政策でも、原子力の活用を重視する国民民主と、再生可能エネルギーシフトを主張する立憲民主や共産との間に立場の隔たりがある。

立憲民主党の安住淳幹事長は7日、臨時国会の首相指名選挙について、野党の候補一本化が必要との認識を改めて示し「課題解決型で、ある程度の期間を決めた内閣はあり得る」と述べたものの、国民民主の玉木代表は13日、自身のXアカウントで次のように述べた。

「この10年、国家安全保障環境やエネルギー安全保障をめぐる国際環境が激変する中で、選挙のための『共闘』を意識して共産党などに配慮するあまり、安全保障政策やエネルギー政策をアップデートできなかったことが、与野党の健全な緊張関係が崩れ、二大政党制の可能性を葬り去った元凶ではないでしょうか。 こうした問題意識から、もう一度政権を担える現実的な責任野党を作ろうと、2020年9月、文字通り「解党」して旧民主党的なものと決別し、一から出直したのが今の国民民主党です。 だからこそ、私たちは、安全保障政策やエネルギー政策で、曖昧な理想論に戻ることはできないのです」

日本維新の会も、経済とエネルギー安全保障を優先し、条件付きで原発再稼働も認める立場で、立憲は「脱原発」を中核に据えており、歩み寄りは困難だ。​​

吉村洋文 日本維新の会代表は「Abema Prime」の7月9日の放送で政策の方向性が真逆と説明。「立憲民主党の中心で。蓮舫さんもそうだと思うけど、立憲民主党とは組めないと思います」と述べ、決定的な相違を語っていた。

また公明党は、もともと「中道・福祉重視」の立場から、自民党との連立の中で“抑制的な役割”を担ってきた政党であり、軍事・エネルギー・憲法といった大きな国家戦略課題では、いずれの野党とも立場の差が明確であり、どの党と組んでもすり合わせは容易ではない。

玉木代表は同日、幹事長間での協議を進める考えを示している。

与党側は連立離脱による不安定化を抑えるべく、結束強化に動く。一方、野党側は政策調整と戦略連携を急ぎ、政権奪取の現実的シナリオを描こうとしている。首相指名選挙をめぐる駆け引きは、戦後政治の転機ともなりうる局面を迎えている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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