中国・杭州発ソウル行きのエアチャイナ機で10月18日、座席上の荷物棚に入っていた乗客のモバイルバッテリーが突然燃え出した。火花とともに「バーン」という破裂音が響き、すぐに炎が上がったという。機内はたちまち煙で満たされ、客室は騒然となった。
「火だ!」「早く消火器を!」という叫びが飛び交い、荷物棚の扉が開いた瞬間、火は一気に燃え広がった。乗客の一人は「煙で前が見えなかった。荷物棚は真っ黒に焦げていた」と語る。
乗務員が消火器で火を消し止め、飛行機は上海浦東空港に緊急着陸した。けが人は出なかったものの、乗客の多くが「命の危険を感じた」と口をそろえ、「あと30分で目的地に着くはずだったのに」と肩を落とし、無念そうな表情を浮かべていた。
(荷物棚から出火した機内、2025年10月18日、エアチャイナCA139便)
こうした問題は以前から繰り返されてきたが、今年だけでもAnker(安克)、Romoss(羅馬仕)、シャオミ(小米)など中国の大手メーカーが、相次いでモバイルバッテリーのリコールを発表している。いずれも過熱や発火の恐れがあり、対象は数十万台規模にのぼる。
中国の監督当局は6月、「3C認証(中国の国家安全認証制度で、日本のPSEマークに相当)」のない製品やリコール対象型番の機内持ち込みを禁止し、航空各社に警戒を促している。
モバイルバッテリーは内部の電極が衝撃や製造不良でショートすると、急激に温度が上がる「熱暴走」を起こし、瞬時に炎を上げることがある。特に気圧や温度変化が大きい機内では危険性が高い。旅行前に認証マークの有無や状態を確認し、怪しい製品を避けることが、命を守る第一歩だ。


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