中国で、家族が海外に住んでいるというだけで高官が次々と職を追われている。今回処分を受けたのは、前中国人民銀行(中央銀行)総裁の易綱(イー・ガン)や元深セン市党委書記の王栄(ワン・ロン)ら9人である。
11月1日に閉幕した中国人民政治協商会議(政協)の会議後、9人は政協内の要職を一斉に解かれた。いずれも表向きは「肩書を残したままの人事調整」とされているが、実際には政権中枢から外された形だ。
失脚の理由は、家族が長期にわたり海外に住み、帰国を拒んでいることにあったという。政権内部の関係者によれば、今回の処分は中共が進める「裸官一掃」の一環だという。
習近平政権は近年、官僚や軍の幹部が家族と資産を海外に移す動きを警戒し、「裸官(らかん)」と呼ばれる幹部の排除を進めている。表向きは「腐敗防止」とされているが、実際には体制への「潜在的不忠者」をあぶり出す狙いがある。
政権はさらに、海外留学中の高官の子どもにも「卒業から半年以内に帰国せよ」と通達しており、これを拒めば親の指導的地位が「調整される」つまり、実質的には左遷や更迭の対象となる。
「裸官」問題は今に始まったことではない。2012年、香港誌『動向』は「中国共産党(中共)高官の9割以上の直系親族が西側諸国に定住している」と報じた。さらに2010年の全国政治会議(両会)では、中央党校の教授・林喆(リン・ジャー)が「1995年から2005年の10年間で、中国には118万人の裸官が存在し、そのうち4千人が国外へ逃亡し、総額500億ドル(約7兆5千億円)を持ち出した」と明らかにしている。
中国でいまも語り継がれる対聯(中国の伝統的な対句)に「満朝文武藏緑卡、半壁江山養紅顏(官僚のほとんどが外国の永住権を隠し持ち、国の富の半分は愛人のために消えていく)」という一句がある。これは中共官界に根深く残る偽りの忠誠と腐敗の実態を鋭く突き、いまも続く現実を象徴している。


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