消費税 食料品ゼロ税率で事業者に負担増の可能性 参院委で財務大臣がリスク認める

2025/11/17 更新: 2025/11/17

11月14日の参議院予算委員会で、参政党の安藤裕議員が消費税の本質をめぐり片山さつき財務大臣を問い質し、議論が大きな注目を集めた。また物価高騰対策として提案される「食料品の消費税ゼロ」が、かえって事業者の負担増につながる可能性がある点を指摘した。

質疑の核心は、食料品の消費税率を0%にした場合に生じる問題だった。安藤議員は飲食店の例を挙げ、制度の構造的な矛盾を指摘した。

安藤議員は、食料品の税率をゼロにすると飲食店の仕入れにかかる消費税もゼロとなる一方、仕入れ価格が8%分下がらなければ、仕入れ時に支払った税額を差し引く「仕入税額控除」が使えなくなると説明。その結果、事業者はこれまで控除していた分を負担せざるを得ず、実質的な増税となると追及した。

片山財務大臣はこれに対し「控除できない分が出てくるわけですから、増える可能性が高い」と答弁し、ゼロ税率が一部事業者にとって負担増となる可能性を認めた格好となった。

安藤議員はさらに、消費税をめぐる国民の基本的な理解について問題を提起した。安藤議員が「納税義務者は誰か」と質問すると、片山大臣は「法律上、納税義務者は事業者である」と明確に回答した。

一般には、消費税は消費者が支払い、事業者が預かっている「預かり金」だと理解されている。しかし実際には、消費税は事業者の売上に対して課税される税金であり、利益がでなければ基本的に課されない法人税とは違って、赤字企業であっても売上があれば納税義務が発生する。安藤議員は、この構造が事業者の経営負担を押し上げ、賃上げの阻害要因になっていると指摘した。

消費税をめぐっては、歴代自民党政権が「消費税は全額社会保障費に使われている」と説明してきた経緯がある。石破前首相も「消費税を減税すれば社会保障の安定財源が確保できなくなる」と主張している。しかし、この説明については専門家や一部議員から疑念が呈されている。

消費税法第一条2項には「消費税は医療・介護の社会保障給付や少子化対策に要する経費に充てる」と明記されている。この条文は2012年、野田民主党政権下で税率5%から10%への引き上げを進める際、国民の理解を得る目的で加筆されたものだとされる。

しかし、消費税は法的には目的税ではなく、法人税や所得税と同様に「一般財源」として扱われる。政府が毎年公表する一般会計の歳入・歳出構成を見ると、消費税を含む歳入は、社会保障費だけでなく、防衛費、公共事業費、国債費など多岐にわたる支出に充てられている。こうした決算構造からは、「消費税は全額社会保障に使われている」との説明が事実と整合しないとの指摘が根強い。

納税義務者が事業者であるという制度上の事実、そして税収が一般財源として広く支出されている現実は、これまで政府が示してきた説明と一定の乖離を抱えている。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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