側近の馬興瑞失脚 習近平「一尊」体制に揺らぎか

2026/04/06 更新: 2026/04/06

新華社は4月3日夜、中国共産党(中共)中央政治局委員で、中央農村工作指導小組副組長の馬興瑞が「重大な規律違反および違法の疑い」で調査を受けていると伝えた。習近平派の側近中の側近とされる馬興瑞の失脚を受け、習近平が苦境に立たされているとの見方が広がっている。

馬興瑞は昨年7月、新疆ウイグル自治区党委書記を退任し、当局は当時、「別の任務に就く」と説明していたが、今回の発表で、当局は馬興瑞が中央農村工作指導小組副組長に転じていたことが明らかになった。

馬興瑞は66歳。山東省鄆城県の出身で、1988年に博士課程を修了した後、ハルビン工業大学で教壇に立った。航空宇宙工学・力学学科主任、航空宇宙学院副院長、副学長などを歴任した。

1996年以降は、中国航天科技集団公司の総経理、工業情報化部副部長、国家航天局局長、国家原子能機構主任、国家国防科技工業局局長などを歴任した。2015年には深セン市党委書記、広東省長を歴任し、2021年12月には新疆ウイグル自治区党委書記に昇格した。2022年10月には第20期中央政治局委員に就任した。

2025年7月1日、中共は、統一戦線工作部副部長の陳小江が馬興瑞の後任として新疆ウイグル自治区党委書記に就いたと発表し、馬興瑞については「別の任務に就く」としていた。

政治評論家の陳破空氏は、馬興瑞が新疆から北京に戻されたあと、処分内容を公表するまでに9か月もかかった。一方で、同じ政治局委員である張又侠や劉振立の場合は、わずか5日で「軍事委員会主席責任制を著しく破壊した」といった罪名を公表した。この対応は大きく異なり差は非常に大きいと指摘した。

陳破空氏は、「馬興瑞の失脚は三つのことを示している。第一に、習近平の失敗であり、習近平と彭麗媛(第一夫人)の双方に重大な打撃を与えた。なぜなら、馬興瑞はこの2人の側近中の側近だからだ。第二に、第20回党大会の失敗だ。第20回党大会で習近平は自らの派閥による権力独占と個人支配を強行し、自分の人馬だけで体制を固めれば党と国家の局面を好転させられると考えたが、結果は思惑とは逆になった」と述べた。

さらに陳氏は、馬興瑞の摘発は、習近平の絶対的権威のイメージ作りが失敗したことも示していると指摘した。馬興瑞に対する調査は、習近平や彭麗媛の望むところではなかったとしている。

時事評論家の唐靖遠氏は、馬興瑞がこの時期に失脚したのは、習近平と反習派元老との駆け引きの結果だとみている。温家宝が1週間前に注目を集める形で公の場に姿を見せたのと同じ日に、馬興瑞の元秘書である郭永航も失脚したという。

唐氏は、「今年の全人代と政協会議は、習近平と反習派元老の権力闘争における非常に重要な指標だった。両会閉幕後の状況をみれば、習近平は思惑通りに軍権を取り戻せず、党と政府の実権を実質的に掌握することもできなかった。つまり、習近平にはもはや馬興瑞を守り切る力がないということだ」と述べた。

過去2年、軍内では反腐敗を名目とする粛清が激しさを増し、李尚福、苗華、何衛東ら数十人の将官が相次いで摘発された。馬興瑞については、軍需産業の汚職事件に関与したとの見方があるほか、親族ぐるみの腐敗、広東省勤務時代に許家印と近い関係にあったとの指摘、新疆ウイグル自治区党委書記時代の深刻な腐敗、さらには貧困扶助資金に手をつけていたとの見方も出ている。

陳破空氏は、「これを習近平による大粛清や反腐敗の結果だとみる人もいるが、まったくそうではない。第20期三中全会の後、習近平は脳卒中で倒れ、1年半にわたって権力を失った。そうした背景の中で、馬興瑞が北京に戻され、調査と責任追及を受ける事態が起きた。習近平は張又侠、劉振立を倒した後、馬興瑞を救済するか、少なくとも穏便に収められると思っていたが、実際にはそれができなかった」と述べた。

また唐靖遠氏は、馬興瑞が出世できたのは、彭麗媛の強力な引き立てと推薦があったからだとし、その失脚は、中共内部で二つの権力中枢が対立し、主導権を争っていることを最も直接的に示すものだと述べた。

唐氏はさらに、「馬興瑞の拘束は、この事件を利用して習近平派を組織的かつ大規模に粛清する狙いがある。何衛東と苗華の事件だけでも、軍内にいた何百、何千もの習近平派はほぼ一掃された。馬興瑞の事件によって、さらに多くの習近平派が根こそぎ排除されることになるだろう」と語った。

唐氏はまた、中共の反腐敗とは、かつての毛沢東・鄧小平時代における路線闘争や権力闘争の表れであり、今はそれに「反腐敗」という名をかけているにすぎないと指摘した。

陳破空氏は、習近平の権力は第20期三中全会以降、下り坂に入っており、絶対的権威や実権を掌握しているように見えるのは見せかけにすぎないと述べた。習近平は強硬な手段、あるいはクーデター的手法によって張又侠を倒し、一度は巻き返したものの、それが党内と軍内の不満を招き、自身の威信はいっそう低下したとしている。陳氏は、習近平は軍事委員会主席の地位に執着しているが、すでに「紅朝最後の皇帝」であり、中共が終末へ向かう流れは逆転できないと述べた。

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