中国 屋根で救助待つ住民、学校・病院・老人ホームも孤立 毒ヘビ流出で被害さらに拡大

また「予告なし放流」 中国・広西で壊滅的洪水

2026/07/08 更新: 2026/07/08

自然災害は避けられない。だが、中国では豪雨のたびに「防げたはずの悲劇」が繰り返されている。

中国では豪雨のたびに繰り返されるダム放流、決壊、避難の遅れ、そして情報統制。今年もまた、広西チワン族自治区で複数のダムが決壊し、村々が濁流にのみ込まれた。

「村が消えた」「知らせが来た時にはもう逃げられなかった」。被災者たちの叫びは、今年もまた同じ問いを突きつけている。

しかも今年は、それだけでは終わらなかった。洪水でヘビ養殖場まで流され、約900匹のヘビが周辺へ流出。住民がかまれる被害も相次ぎ、被災地は文字どおり「逃げ場のない地獄」と化した。

中国ではこの数日、記録的な豪雨により62本の河川が警戒水位を超え、各地で被害が拡大している。その中でも、とりわけ深刻な惨状となっているのが広西チワン族自治区だ。

 

六藍ダムの決壊で押し寄せた濁流により、広範囲の住宅地が水没した(2026年7月6日、中国広西チワン族自治区横州市、ネット映像より)

 

「村が消えた」 広西を襲った壊滅的な洪水

台風10号の影響による豪雨で、広西・横州市では六藍水庫と雲表水庫が相次いで決壊した。

濁流はわずか十数分で住宅をのみ込み、「村がほとんどなくなった」「見渡す限り数キロ先まで海のようだった」と現地住民はいう。

公式発表では横州市で4人死亡、8人行方不明とされているが、現地では「もっと多いはずだ」と疑問の声も上がっている。

 

豪雨による大規模な浸水で、多くの学校が孤立し、数千人の生徒が校内に取り残された(2026年7月、中国広西チワン族自治区貴港市、ネット映像より)

 

想像を超えた被災現場

洪水は人々の日常を一瞬で奪った。

発熱した赤ちゃんを病院へ運ぶため、父親が赤ちゃんをプラスチック製の桶に入れ、円卓の天板に載せて首まで水につかりながら歩く映像は、多くの人に衝撃を与えた。

一家3人は住宅内に10時間以上閉じ込められ、水面と天井の間に残ったわずか10センチほどの空間で息をしながら救助を待った。

広西各地では、屋根の上で救助を待つ住民や、濁流に流される人、山へ避難する高齢者や子供たちの様子が次々とSNSに投稿され、現地のあまりにも悲惨な状況が画面越しにも生々しく伝わってくる。

 

約30時間にわたり山上に孤立した住民たち。現地では、当局が民間による救援活動を認めなかったとの情報も伝えられた(2026年7月7日、中国広西チワン族自治区横州市雲表鎮亞坡村、ネット映像より)

 

被害は住宅だけにとどまらず、病院や老人ホーム、学校にも及んだ。精神科病院では患者と職員約200人が孤立し、老人ホームでは100人以上の高齢者が救援を待ちながら薬や食料の不足に直面。

学校では4千人を超える児童・生徒や教職員が取り残され、別の高校でも約3500人が校内に孤立するなど、多くの施設で断水や停電が続き、支援物資も十分に届かなかった。

さらに洪水でヘビ養殖場が流され、コブラなど約900匹が流出。住民がかまれる被害も発生したが、道路が寸断され病院へ搬送できない地域もあった。

 

洪水で流されたヘビ養殖場から逃げ出したコブラとみられるヘビが、濁流の中を泳ぐ様子(2026年7月6日、中国広西チワン族自治区横州市、ネット映像より)

 

数々の疑問

今回の洪水では、被害の大きさだけでなく、災害対応やダム管理のあり方にも多くの疑問が投げかけられている。

住民によると、ダムは午前6時に放流を開始したにもかかわらず、避難通知が届いたのは約2時間後。しかも、住民に伝えられたのは「放流」の知らせだけで、「ダムが決壊する恐れがある」との説明はなかったという。

決壊した六藍水庫は建設から60年以上が経過したダムで、以前から老朽化やひび割れが指摘されていた。改修工事を終え、「問題ダム」から「モデル事業」へ生まれ変わったと宣伝されてわずか1年後に決壊したことにも、疑問の声が上がっている。

被災地では「救援物資はほとんど届かず、自力で生き延びるしかなかった」と訴える住民が相次ぐ一方、SNSでは死者や行方不明者に関する投稿が次々と削除され、実際の被害規模は今なお見えにくいままだ。

ネット上では「これは人災」「放流そのものは仕方ない。しかし、なぜもっと早く住民に知らせなかったのか」「事前に十分な避難時間があれば、救えた命や守れた家もあったはずだ」と怒りの声が噴出している。一方、決壊の経緯や避難通知が遅れた理由、被害の全容について、当局から十分な説明はいまだ行われていない。

 

六藍ダムの堤体が約50メートルにわたって決壊し、濁流が下流の村々をのみ込んだ(2026年7月6日、中国広西チワン族自治区横州市、ネット映像より)

 

洪水より恐ろしいもの

豪雨も台風も、人間には止められない。

しかし、中国で毎年繰り返される洪水を見ていると、多くの人が口をそろえる。「恐ろしいのは天災ではなく、人災だ」と。

遅すぎる避難通知。老朽化したダム。不十分な避難体制。届かない救援。そして、被害の実態さえ見えなくなる情報統制。

今年もまた、「助かったはずの命」「失わずに済んだはずの村」が濁流に消えた。

濁流の中で泣き叫ぶ被災者と、怒りをぶつけるネットユーザー。その光景は、毎年ほとんど変わらない。

なぜ同じ悲劇が、これほどまでに繰り返されるのか。

その問いから当局が目を背け続ける限り、中国の雨季は来年も再来年も、「自然災害」では終わらない。

 

屋上に取り残された住民(左)、決壊した六藍ダム(中央)、濁流にのみ込まれた市街地(右)。(2026年7月、中国広西チワン族自治区、ネット映像より)
李凌
中国出身で、日本に帰化したエポックタイムズ記者。中国関連報道を担当。大学で経済学を専攻し、中国社会・経済・人権問題を中心に取材・執筆を行う。真実と伝統を大切に、中国の真実の姿を、ありのままに、わかりやすく伝えます!
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