中国当局は3月に開かれる全国人民代表大会(全人代、日本の国会相当)で、習近平国家主席の首席経済アドバイザーを務める劉鶴・中央財経領導小組弁公室主任を、経済担当の副総理に起用する予定と香港メディアが報じた。報道が事実なら、習近平氏が党内慣例を打ち破り、劉氏をスピード出世させたことになるとの見方が広がっている。
ロイター通信や香港メディア「サウスチャイナ・モーニングポスト」など複数のメディアによると、66歳の劉鶴氏は3月の全人代で、馬凱・現副総理の後任に抜擢する見通しだという。
中国の最高国家行政機関である国務院の指導部では「1正4副5国務委員」の10人体制を取っている。正職級総理は一般的に、党最高指導部である中央政治局常務委員が担当する。4人の副総理と5人の国務委員の人事は、党内での序列や経歴に基づいて決められる。
現総理の李克強氏は3月以降も引き続き正職級総理を務めるほか、汪洋氏が副総理として中国人民政治協商会議全国委員会を管轄するとみられる。しかし、張高麗氏、劉延東氏と馬凱氏、3人の現職副総理は退職の年齢になったため、3月に副総理の職を退く予定だ。
香港メディアによると、3人の副総理の候補者として、党政策決定機関である中央政治局の委員の孫春蘭氏、胡春華氏、楊潔篪(国務委員を兼任)と劉鶴氏が有力視された。しかし、4人のうち、劉鶴氏の党内での経歴が最も浅い。昨年10月の党大会まで、劉鶴氏の党内地位は、党中央政治局の下位組織にあたる党中央委員会の委員にとどまっていた。
香港紙・明報は、経済学者でもある劉鶴氏が3月に、経済政策担当の副総理に昇格するとなれば、習近平氏による「異例の抜てき」で、「党内人事調整において、またも慣例を打ち破った」との見方を示した。
劉鶴氏は 23~26日スイスで開催された世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」に出席したばかりだ。
また、劉氏は今月16日に北京で開かれた「一帯一路」経済圏関連会議にも出席した。
劉鶴氏は、習近平国家主席とは中学校のクラスメイトだった。人民大で工業経済を専攻、同大で修士号を取得後、米シートン・ホール大学やハーバード大学ケネディスクールなどへの留学経験を持つ。また、国務院発展研究センター、国家計劃委員会、中央財経領導小組などで要職を務めた。
劉鶴氏がダボス会議において、中国当局が今後市場開放と経済改革を一段と進めていくと発言した。
在米中国経済専門家の何清漣氏は米ボイス・オフ・アメリカに対して、脚光を浴びている劉鶴氏が副総理に就任した後、中国の債務急増問題、シャドーバンキング問題、資本流出問題など様々な難題に直面すると述べた。
また、ダボス会議での劉氏の発言について、何氏は「副総理候補者として、劉鶴氏の発言は中国当局の姿勢を示しただけで、国際社会への約束ではない。中国の改革措置に期待しない方がよい」との見解を示した。
「共産党政権は、資本主義が党を凌ぐのを絶対に許さないからだ」。
(翻訳編集・張哲)
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