昭和の銀幕を飾った大スターの一人、石原裕次郎さんが亡くなったのが1987年。昭和62年の7月17日だった。
もう35年前のことになる。今思い返してみても52歳(享年53)という早すぎる病没が信じられない気がする。テレビでおなじみの刑事役のころには、すでに大病をかかえた体だったのかと思うと、俳優という職業とは、かくも凄絶に演じ続けなければならない宿命のようなものかという気さえしてくる。
訃報を伝える当時のテレビニュースで、涙をこらえ、気丈にインタビューに応じるまき子夫人が「裕さんはアジサイの花が好きだった。この日を、あじさい忌と呼んでほしい」という願いを口にされていたことを思い出す。
あじさい忌とは、まことに洒落た名前である。天国の裕次郎さんも、あの懐かしい照れ笑いを浮かべながら、「へえ、結構いいんじゃねえの」とご満悦であろうかと想像する。なお、作家の林芙美子さんの命日も「あじさい忌」と呼ばれる。
雨は、適度に必要ではあるが、降り続けばやはりうっとうしい。外出も、買い物も、傘を差しての行動になるので不便なものだ。しかし、不思議なことにアジサイという花は、そぼ降る雨に濡れてこそ美しい。
調べてみると、1987年の梅雨明けは7月23日ごろで、例年よりだいぶ遅かったらしい。確か、裕次郎さんの葬儀も、告別式も雨もようだった。生前の裕次郎さんが「雨嫌いの雨男」だったことに合わせたな、と誰かが語っていた。
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