漢字の「秋桜」を無理やり「コスモス」と読ませるとは、いやはや日本語は、なんと大胆な言語かと思う。
日本語の「当て字」は、文字では読まず、イメージで読む。表意文字である漢字は、そのイメージを風呂敷でゆるやかに包むようにまとめるのだ。
麦酒(ビール)、洋袴(ズボン)、浪漫(ロマン)などは古典的な当て字だが、日本語を学ぶ中華圏の学生は、これには困るらしい。ましてや昨今、漢字の原義をほとんど無視して子供につけられるキラキラネームは、日本人でも知らなければ全く読めない。
では、秋桜(コスモス)がいつ頃から使われたかと言うと、はっきりしている。
昭和52年(1977)に山口百恵さんが歌って大ヒットした曲名が、これであった。
作詞・作曲は、さだまさしさん。男女の恋愛歌がほとんどであった歌謡曲のなかで、嫁ぐ娘からみた母親の深い愛情をうたった「秋桜」の歌詞とメロディは、45年前の日本人の心を打ち、今でも記憶されている。
当時18歳の百恵さんに、さださんは「百恵ちゃんも、いつかこの歌詞が分かる時がくるよ」といって完成した曲を渡したという。その山口百恵さんは、21歳で俳優の三浦友和さんと結婚。最後の歌が終わると、ステージ上にマイクを置いて芸能界を去った。
「ありがとうの言葉を噛みしめながら、生きてみます、私なりに」。ご子息たちが今、芸能界で活躍しているという。百恵さんの歌う名曲「秋桜」は、見事に完結したと言ってよい。
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