ふと気がついた。東日本大震災からの復興を支援するチャリティーソングとして、震災翌年の2012年に発表された「花は咲く」という歌がある。リリースされたのは同年5月23日というから、ちょうど10年前に当たる。
作詞した宮城県仙台市出身の映画監督、岩井俊二さんによると「この歌は震災で亡くなった方の目線で作りました」という。確かにその歌詞は、亡くなられた方々が、まるでそこにおられるかのように語る言葉として、聴く人それぞれの胸に染みわたってくる。
メロディも、歌詞も、もちろん素晴らしい。ただ、私はこの「花は咲く」という題名に、他の題名ではおそらくありえなかったであろう大きな感動を覚えている。
それは「花が咲く」や「花も咲く」ではないのだ。
何があろうとも、圧倒的な事実として「花は咲く」。
この世にどれほど巨大な苦難があり、人間が悲しみに打ちひしがれても、天が定めた摂理がある以上、大自然の不変の法則によって「花は咲く」のである。
例えば路傍に見かけた野菊でもよい。見れば、その中に小さな宇宙がある。
花は咲くという当たり前の自然現象に接して、私たちは天空の大宇宙を見ているのと同じ感覚を持てるのではないだろうか。
だからこそ、自然破壊や環境汚染によって咲くべき花が咲かなくなれば、まさに一大事なのである。
新コラム【花ごよみ】は、そんな宇宙の縮図のような花や樹々を見つめ、季節の便りとして読者各位へお届けしていきたい。
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