【碰瓷】
中国語の「碰瓷(ポンツー)」は、強いて訳せば「当たり屋」であろうか。
もとは、道端で陶器を売る商人の強請(ゆすり)の手口である。通行人にぶつかるような場所へ、少し欠けた雑器をわざと置いておく。それが通行人の足に触れると、「これはウチの高値の売り物だ。ここが破損した。弁償しろ」と難癖をつけて、金を払わせようとする。
今の「碰瓷」は、だいぶ異なっている。走行中の車に向かって(ケガをしない程度に)故意にぶつかっていくのだ。それから路上に倒れ、負傷したフリをしながら「お前の車がぶつかったのだから、金を出せ」と大声で叫ぶ。
「碰瓷」でネット動画を検索すれば、車載カメラに映った「わざとらしい交通事故」が、いくらでも見られる。これが今の中国社会の「珍現象」になっているのは、情けない限りである。
ただ、このようになる兆候は、以前から見られた。
2006年のこと。南京市内の路上で年配の女性が、自分で転倒した。通りがかった親切な男性が、彼女を病院へ連れていった。ところが女性とその家族は、なんと助けてくれた男性を加害者にして裁判を起こしたのである。
男性は弁明したが敗訴。日本円にして75万円ほどの治療費を負担する判決が下された。以来、中国は「うかつに人助けができない国」になってしまった。
「ならば手段を変えよう」と思ったか否かは定かでない。ただ、今や男女を問わず、自分から「碰瓷」してくるほど中国社会の病は深刻である。
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