「割韮菜(ニラを刈る)」という中国語がある。
畑のニラが伸びた頃、鎌で刈り取ってしまうことを指すが、「刈り取った後でもニラはまた生えてくるから、大きな損をこうむることはない」というのが本来の意味である。
そこから派生した意味として、この言葉は株式用語のひとつにもなっていた。
例えば、全財産を投じた個人投資家が「刈り取られて」消えたとしても、また次の投資家が(新たなカモになって)新規参入してくるという、いわば元締めの視点から見た、ややブラックな含みをもつ言葉なのだ。
もっとも、投資家であればリスクをともなうので、そこに求められる自己責任はある。
ところが昨今では、この語の用法が株以外にも広がっているとともに、被害者の自己責任とは言えないケースも含めて、日常つかわれる言葉になっているのだ。
その場合、韮菜(ニラ)は社会的に抑圧され、搾取されている中国の庶民を指す。それに対して、公的権力をもつ上位の人間が、手にした鎌で畑のニラを刈り取るように、問答無用で財産を没収したりする場合に使うのである。
理不尽な被害をこうむった庶民は、やり場のない怒りと、どうにもならない諦めと、笑って現実を忘れたいほどの精神的錯乱のなかで「割韮菜!」と叫ぶ。この場合、もちろん刈り取ったニラ畑のように、損失が再生される可能性はない。
大事なことを言い忘れた。ニラを刈る「鎌」とは、まさしく紅旗(赤旗)の図案に描かれている、あれである。
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