インド太平洋の視点 2023年に注目すべき5つの重要課題

2023/01/04 更新: 2023/01/03

ヨーロッパではまだ戦争が続く一方、インド太平洋などで平和のためのパートナーシップが結ばれるなど、地質学的な出来事や地政学的な激震が勃発した一年が終わりを告げようとしている。

環太平洋火山帯の海底火山がトンガ上空に巨大な灰と蒸気を噴出し、津波と地球を2周する衝撃波を引き起こしてからわずか数週間後、ロシア軍が2022年2月に隣国ウクライナに侵攻し、さらなる衝撃を世界に与えた。

いずれの緊急事態においても、志を同じくする国々は、人道支援、軍事装備、財政支援、対ロシア制裁など、トンガおよびウクライナの側に結集し、即座に統一された対応を取った。

このほか、2021年2月の軍事クーデターに端を発したミャンマーでの破壊的な紛争、国連決議に違反した北朝鮮の相次ぐミサイル実験、中国共産党のゼロコロナ対策に対して習近平総書記の辞任要求を含む歴史的な抗議行動が中国全土に波及するなど、危機は1年を通じ、さまざまな形で発生した。

2023年、この地域はこうした火種と格闘し続ける一方で、朝鮮戦争休戦70周年、国連総会世界人権宣言75周年などの節目も迎えることになる。 新しい年には予期せぬ課題と機会がもたらされることは間違いないが、この5つの課題には特に注目する必要がある。

ミャンマーの悲劇

軍が民主的に選出されたミャンマー政府を打倒してから約2年、和平計画を無視し、流血の弾圧を終わらせることを拒否する政権は、数万人の死者と推定140万人の避難民を出した人道的災害をさらに悪化させている。

近隣諸国は2022年末、ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)からのさらなる孤立に直面すると警告した。また、同国軍事政権は国連で議席に就くことを阻止されている。

一方、米国を含む国々は、同政権およびその支配下にある組織に対する制裁を継続している。 こうした懲罰的な措置とは対照的に、国連の人権専門家は、中国とロシアが「毎日戦争犯罪と人道に対する罪を犯している」にもかかわらず、戦闘機やロケット弾、大砲をミャンマーの軍事政権に供給していると報告している。

北朝鮮の核開発計画

北朝鮮が2022年に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む一連のミサイル実験を実施し、米国本土に到達できると報じられていることから、2017年以来初の核実験の準備が進んでいることが広く懸念されている。 北朝鮮の核開発は「今世紀に例のない絶対的な力」を構築することを目的としていると、11月のICBM発射後に最高指導者の金正恩が発言している。

日本、韓国、米国などの国々は、北朝鮮の大量破壊兵器プログラムがもたらす不安定化の影響を強調している。 しかし、ミャンマーの場合と同様、中国とロシアは、国連安保理による北朝鮮への制裁強化の動きを妨げている。

米国インド太平洋軍はミサイル発射を非難し、同盟国である日本と韓国を守る米国の「鉄壁の」コミットメントを強調した。 11月下旬には、韓国の尹錫烈(Yoon Suk Yeol)大統領が、北朝鮮が兵器開発に固執する場合、韓国、日本、米国が共同で前例のない対応を取ると警告し、 「北朝鮮が7回目の核実験を行うことは極めて賢明でない」と述べた。

パートナーシップの繁栄

北朝鮮の好戦的な行動に対する協調的な対応は、2023年の継続的な成長を約束する連携姿勢の一例だ。 11 月、ASEANはインドおよび米国との関係を包括的戦略パートナーシップに格上げし、貿易と投資を強化した。これによ り、ジョー・バイデン(Joe Biden)米国大統領は「自由で開かれた、安定と繁栄、 そして弾力性と安全性のあるインド太平洋」を構築できると述べている。

今年初めには、オーストラリア、インド、日本、米国からなる日米豪印戦略対話(クアッド)が、サイバーセキュリティ、宇宙、気候変動、海洋領域認識などの分野での取り組みを発表した。 5月に東京で開催された首脳会議で発表された声明は「クアッドは、自由で開かれたインド太平洋構想を共有する地域のパートナーとの協力に取り組んでいる」と述べている。

オーストラリアと米国はまた、英国と提携して、先進的な能力を開発し、オーストラリアが通常兵器搭載の原子力潜水艦を取得するのを支援している。 AUKUSとして知られるこの安全保障条約は、「地域の安定を強化し、紛争が強制されることなく平和的に解決される自由で開かれたインド太平洋を守ることに焦点を当てている」と、12月の声明で各国の防衛当局トップが述べている。

国境紛争

中印戦争からほぼ60年後の2022年末、「実効支配線(LAC)」と呼ばれる3,400キロの国境線で両国軍が衝突し、緊張が再び高まった。 インドのラジナート・シン国防相は、人民解放軍(PLA)兵士がアルナーチャル・プラデーシュ州で「一方的に現状を変更する」ためにインドの領土を侵害しようとしたが、インド軍がこれを撃退したと報告した。 両軍はスパイク付きのクラブや棒を使い、負傷者は出たが死者は出なかった。一方、2020年半ばには、核保有国同士の45年ぶりの致命的な衝突が発生している。

インド政府は、中国政府が国境協定を守ることを拒否し、代わりに山岳地帯に軍隊を集結させ、武器と軍事インフラを整備していると主張している。 インド政策研究センターのスシャント・シン(Sushant Singh)上級研究員は、12月のフォーリン・ポリシー誌で、「実効支配線沿いの現状…また、中国が危機解決のためのインドの課題についての議論を拒否していることが、両国の関係の構造的不安定性を高めている」と述べている。

台湾をめぐる緊張

中国の現状打破の意欲は、ヒマラヤの国境侵犯にとどまらない。 8月には自治台湾周辺で過去最大規模の訓練を行い、日本の排他的経済水域内に弾道ミサイルを落下させるなどしている。 一方、中国空軍の航空機は、台湾と中国を隔てる幅180キロの台湾海峡の中間線を何度も通過しており、アナリストによれば、「新常態」を確立して台北の防衛力を消耗させようとしている。

中国共産党は台湾を自国の領土と主張し、これまで一度も中国に属したことのない台湾を支配下に置くことも辞さない姿勢をますます強めている。 日経アジアによると、習近平は10月に中国共産党の指導者として3期目(5年)を確保し、党規約を改正して、台湾との統一を最重要目標とした。

台湾が潜在的な侵略に対する防衛力を強化する中、インド太平洋地域のパートナーは、2023年以降もルールに基づく国際秩序へのコミットメントを強化している。 バイデン大統領は9月の国連総会で、「我が国は台湾海峡の平和と安定の維持に努める」と述べた。

Indo-Pacific Defence Forum