跪かされたマイルズ・ユー氏の彫像が波紋よぶ むしろ「民族英雄」の勲章か?

2023/03/08 更新: 2023/05/26

米国のトランプ政権下でポンペオ前国務長官の中国政策に関する首席顧問を務めたマイルズ・ユー余茂春)氏は2日、自身のツイートで「今買いたいもの」について明かした。

ユー氏が転載したジェニファー・ゼン(曾錚)さんの投稿動画の中には、後ろ手に縛られて土下座させられた「ユー氏の彫像」があった。なんとユー氏は、この自身の像を「買いたい」と言っているのだ。

「現代の秦檜」と中共は言うが

彫像の首にかけられた看板には「現代の秦檜(しんかい)」と記されている。

秦檜は南宋の宰相であったが、北方の金(きん)と妥協し、救国の英雄である岳飛(がくひ)を謀殺したため、後世の中国人から最も嫌われる売国奴の代表とされている。今も、杭州西湖のほとりにある岳王廟(岳飛の廟)には秦檜夫妻がひざまづく像があり、訪れる中国人観光客から唾棄されている。

この秦檜像になぞらえたのがマイルズ・ユー氏の彫像である。首の看板には「米国の対中いじめ政策でナンバーワンの裏切り者で黒幕。(中国の)親族と絶縁し、悪人(トランプ氏)を助け、祖国を裏切った、祖先を忘れた」などの悪罵が連ねられている。

これについて、ユー氏は「中国共産党プロパガンダの俗悪な作品。歴史のために買いたいですね。笑」と余裕のコメントをするなど、この状況をむしろ楽しんでいる様子だった。

「彫像を買いたい」の投稿から2日後、ユー氏は再度ツイートした。

「彫像のことなど全く気にしていない。これを使って私の言動に影響を及ぼそうとする企みは失敗だ。お金と資源の無駄遣いでしかない」とした上で、過去2日間で、多くの支持と励ましのコメントが届いたことを明かしている。

中共に否定されてこそ「名誉勲章」

また、ユー氏は「むしろこれ(彫像)が、私に与えられるもう1つの『名誉勲章』だと考える人は多い」とツイートしている。

「真実こそ命を救う」を信念として、米ニューヨークから情報発信をするジェニファー・ゼン(曾錚)氏は自身のSNSで、ユー氏を侮辱するこの彫像について「今も憤りを感じる」と書いた。

「ユー氏は米国政府に、中国共産党は中国とも中国国民とも違うことを伝え、その切り離しを成功させるなど多大な貢献をした人物だ」とした上で、中共から攻撃されることは「それが正しい行いであったという証拠だ」とゼン氏は述べた。

ユー氏の「土下座像」関連の投稿に寄せられたコメントにも「これをむしろ光栄に思うべき」や「間違いなく名誉勲章。今の中国で銅像や記念碑を建てられることこそ恥辱だ」といった見解が圧倒的だった。

「最高の宣伝」になる中共プロパガンダ

なかには「これは最高の宣伝だ」として、彫像を作った人に感謝すべきというコメントもあった。

「中国本土でユーさんの事を知っている人は本当に少ない。しかし、彫像を見た人たちは、ユーさんがどんな人で、何を話したのかと好奇心を持つだろう。そうすればユーさんの見解や提案が中国本土で徐々に広まっていくことになる。だから、これを作った人にむしろ感謝すべきだ」

さらに「いっそのこと駐中国アメリカ大使になって、故郷に錦を飾ってほしい」とユー氏の大使指名を求めて、華人に共同署名を呼びかける人もいたほどだ。

ユー氏は現在、米シンクタンク「ハドソン研究所」の上級研究員を務めるかたわら、今も中国共産党による「プロパガンダの罠」など中共の正体を暴露し続けている。 

ユー氏は昨年末、中国当局から中国内の資産凍結や入国禁止などの制裁を科され、中国メディアからは「憎まれる存在」としてたびたび攻撃されている。

中国のネットでユー氏の名前「余茂春」を検索すると「当代漢奸(現代の漢民族の裏切者)」「売国奴」といった罵声が溢れている。

中共という妖魔を映す「照妖鏡」

中国時事評論家の唐浩氏も、ゼン氏と同様の見解を示した。

唐氏は大紀元の取材に対し、ユー氏の存在は「中共の正体を映し出す照妖鏡だ」と指摘する。照妖鏡は、中国の伝奇に出てくる宝器の一種で、人の姿をしている魔物の正体を映し出す鏡である。日本語では照魔鏡(しょうまきょう)ともいう。

「中共が激しく攻撃し、禁じ、あるいは貶めようとするものは何であれ、往々にして中国人民と中国社会にとって有益なものだ」

唐氏はまた「中共による攻撃や侮辱が激しいほど、それが中国人民にとっては有益なものであることを示す。このような観点からしたら、中共はユー氏の『民族英雄』のイメージづくりに協力しているようなものだ」という。

また唐氏は、中国共産党の本質について次のように分析する。

「今や中国共産党は世界でも数少ない全体主義政権だ。その考え方や方法、価値観は世界の自由社会や普遍的価値観とは真逆である。言い換えれば、中共は人類や文明、自由や民主に反する変異した体制だ」

「その中共は、弱い相手に対してはサメのように何の警告もせずに襲い、容赦なくその命を奪うだろう。しかし、自分より強くて勝つ自信がない相手の時には、フグのように体を膨らませ、虚勢を張って威嚇をするだけである」

「中共は、自身(中共)の数々の真相を暴くユー氏をどうすることも出来ないため、罵声や誹謗中傷といった最も下劣な闘争手段で彼を攻撃することしかできない」

秦檜以上の売国奴は誰か?

先述したように、中国では以前から「救国の英雄」である岳飛将軍を陥れた奸臣(かんしん)秦檜の彫像に、観光客が唾をかけたり、棒で叩く風習がある。

この「秦檜たたき」は、今年の旧正月に合わせて公開されたチャン・イーモウ監督の映画「満江紅」の影響で巻き起こった愛国ブームによって一層激化している。原題の「満江紅」は、愛国の激情を込めて岳飛が詠った宋詞の傑作である。

ネット上に拡散される数々の動画のなかには、秦檜像に罵声を浴びせ、ぬいだ靴で彫像の顔を叩いたり、自宅から持参してきたという金属板で殴りつけるなど、激しく興奮した人の姿もあった。

こうした映像をみたネットユーザーからは、あまりの異常さに「見るに忍びない」といったコメントのほか「現代版の秦檜や腐敗官僚はいくらでもいる!」「秦檜以上の売国奴は中共だ。本当に国を愛するなら中共に立ち向かえ!」など、怒りを向けるべき対象が違うと指摘する声も目立つ。

明らかに秦檜像を真似て作られたユー氏の彫像についても「勧善懲悪は中国の伝統だが、今の人は善悪の区別がつかず、違いに傷つけ合っている」と心を痛めている人も少なくない。

ユー氏の彫像がSNSなどで話題になっているなか「祖国が独裁政権に支配されたとき『反逆罪』は最も栄誉ある評価だ」というナチス・ドイツに処刑された若き女性の墓碑に書かれた言葉が、多くツイートされている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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