[東京 15日 ロイター] – 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、「H2A」の後継となる新型主力ロケット「H3」の打ち上げに再挑戦する。1号機は昨年3月、2段目エンジンが着火せず失敗した。JAXAは月探査機の着陸に先月成功したが、主要国が宇宙開発ビジネスでしのぎを削る中、最も重要な運搬手段の打ち上げで結果を出す必要がある。
2号機は17日の午前9時22分から午後1時06分までに種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げを予定。当初は15日を計画していたが、天候不良で17日に延期となった。予備期間は3月31日まで。
JAXAは失敗の原因究明に約7カ月を費やし、3つのシナリオ以外に失敗原因はあり得ないというところまで突き止め、2段目エンジンの点火装置を改良するなどシナリオ全てに対策を講じた。早期の飛行実証に向け、2号機の機体は1号機と同じ形態にし、軌道投入までの飛行経路も1号機と同様にした。
13日に会見したJAXAプロジェクトマネージャの岡田匡史氏は「失敗を乗り越える、特に前半戦がものすごくしんどかった」とこれまでを振り返り、「1号機で失ってしまったものを少しでも早く2号機で挽回したいとの思いで加速して頑張ってきた」と述べた。「納得のいく対策を取った。手応えはあるが、こればかりは100%というものではないので最後まで慎重に進めたい」と語った。
当初2号機には地球観測衛星「だいち4号」を搭載するはずだったが、1号機が指令破壊されて「だいち3号」を失ったために計画を変更。「だいち3号」と同じ質量特性を持つ構造物を載せ、衛星分離の性能などを確認することにした。「だいち3号」は宇宙から地表を観測し、災害が起きた場合に状況の早期把握などに役立てる予定だった。
宇宙政策に詳しい東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、H3の成功は非常に重要だとし、「いくら良い衛星や探査機を作ってもロケットで飛ばせなければ意味がない」と話す。「2号機打ち上げも失敗したとなると、国際協力にもいろんな支障が生じる可能性がある」と語る
2号機は「だいち4号」の搭載を見送ったが、超小型衛星2基を載せる。1基はキヤノン電子が開発した衛星。グループの光学や画像処理などの技術を駆使して画像・動画を撮影し、地表を高感度で観測する。もう1基は繊維メーカーのセーレンなどの技術を宇宙システム開発利用推進機構がとりまとめた衛星。コロナ禍でサプライチェーン寸断リスクが顕在化したため、熱赤外線センサーで工場の熱源を感知し、稼働状況を推定する。
<アルテミス計画にも参加>
H3はJAXAと三菱重工業が2014年から共同で開発。災害時の観測や気象情報の収集、偵察などを行う国の人工衛星の宇宙への輸送、世界で高まる商業衛星打ち上げ需要の受注獲得のため2000億円余りを投じてきた。
特長は打ち上げ費用の安さで、一定条件下ではH2Aの半額となる約50億円を目指している。米国主導の月探査計画「アルテミス計画」で物資輸送も担う予定だ。
当初1号機の打ち上げは20年度を予定していたが、主エンジンの開発が難航し、延期が繰り返され、開発計画も見直された。政府の宇宙基本計画によるとH3は30年度までに日本政府の衛星を約20基輸送することになっているが、大幅に遅れている。
岡田氏は「H3は10年前に国際競争力を持ったロケットというコンセプトでスタートし、この10年間で大きく世界・状況が変化している」と指摘。そうした市場に「フィットさせるようないろいろな活動を引き続き行っていかなければいけない」と話している。
(白木真紀、小宮貫太郎 編集:久保信博)
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