【プレミアム】毛沢東から習近平へ、中国大学生の文化大革命 - 若者は中国をどう見ているのか?

2024/07/31 更新: 2024/07/31

中国の大学の教室では、学生たちが民主主義について激論を交わし熱心に議論している。

民主主義は効果的なのか、それとも欠陥があるのか? そして、それは中国で実現可能だろうか。

この「毛沢東思想と中国の特色ある社会主義理論体系」と名付けられたコースは、中国共産党(中共)政府が定めたイデオロギー教育の一環であり、学生に共産主義への理解と忠誠を育むことを目的としている。

教室内では、学生たちは中共の呼びかけに応じているように見える。表向きには多くの学生がこうしたイデオロギーの授業を受け取れるが、実際には、これらの授業を退屈で無意味だと感じており、政治的プロパガンダとして捉えている学生も多い。

 

講義中、教員が毛沢東思想を学ぶ重要性を説いている一方で、学生たちはネットで番組を見たり、SNSを閲覧したりしている。

授業は必修科目であり、その単位数は非常に多い。なぜ実用性がなく、国際社会で歓迎されないマルクス主義の授業の単位がそれほど高いのか?

答えは簡単だ。毛沢東思想とマルクス主義は中共の立国の基盤であり、習近平と中共にとって、これらの授業はかつてないほど重要なのである。

教室内では、学生たちは党の呼びかけに応じているように見える。表向きには多くの学生がこうしたイデオロギーの授業を称賛しているが、実際には、これらの授業を退屈で無意味だと感じており、政治的プロパガンダとして捉えている学生も多い。彼らは仕方なく授業を受けている (Photo by Kevin Frayer/Getty Images)

大学生は、国家によって選抜され、一定の知的レベルを持つ人々であり、本来であれば独立した創造精神、批判精神、社会的関心を持つべきである。

しかし、強制的なマルクス主義の洗脳によって、中国の大学生が本来持つべき精神には枷がはめられている。

中国問題の専門家、張翎燊氏はこのように語った。創造精神を持つことはできるが、創造するものは党の精神に適合しなければならない。批判精神を持つことは許されるが、共産党を批判すると投獄される。社会的関心を持つことは許されるが、異議者、人権弁護士、法輪功学習者などを支援することは自殺行為である。

総じていうと、すべての人は党の意志に従わなければならない。

小中学校での愛国主義教育が成功している一方で、大学生になると批判的で、反抗的になることが多い。必修科目の概念は、多くの学生が尊重する学問の自由の理想に反している。

2022年11月27日、中国北京で、抗議者が白紙を掲げて検閲制度と厳格なゼロコロナ政策に抗議した(Kevin Frayer/Getty Images)

中共は現在の大学生の「イデオロギー」に深い懸念を抱いている。これらの大学生は、両親や祖父母を通じて毛沢東時代や革命理想とのつながりが薄い中共の官製メディアは彼らが政治に対して悲観的、自私的(身勝手)、冷淡だと形容している。

習近平の指導の下、中国の2500以上の大学でイデオロギー教育を強化し始めた。

学生は卒業するために5つのコースを修了する必要がある。マルクス主義、思想道徳、中国近現代史、そして南シナ海の領土問題や少数民族政策など現代の問題を取り上げる「時事教育」の授業である。

習近平は大学が緩すぎると厳しく批判しており、彼の母校である清華大学も含め、政府はキャンパス内で中共への批判を阻止するために監視員を派遣している。

同時に、官僚たちは教授たちにイデオロギーの教え方を見直すよう促し、一部の大学では、習近平の世界観についての授業が提供され始めている。

ある習近平思想学習アプリの宣伝ビデオでは、若者が仕事帰りのバスでスマホを使ってテストに挑戦するシーンが描かれている。

中国で最もダウンロードされているアプリ「学習強国」には、携帯電話の管理権限を明け渡す「のっとり」機能が備わっていることが、米調査で明らかになった(GREG BAKER/AFP/Getty Images)

現代の中国は資本主義を公然と受け入れている。しかし、毛沢東を敬う習近平にとって、毛沢東の言葉はこれまで以上に重要である。

時事評論家の李林一氏は大紀元に、かつて毛沢東時代には文化大革命と呼ばれていたものが、現在では「時事教育」や「思想政治」、「マルクス哲学」と呼ばれていると述べた。本質的には、習近平の統治下での青年向けの洗脳プログラムに過ぎない。

昨年6月の高考(大学入試)では、複数の省で使用された国語の試験で、習近平の名言が登場し、受験生にその言葉に基づいて自分の認識と考えを反映させた文章を書くよう求められた。

批評家たちは、これが学生たちを政治的な態度表明に導くための手段だと言う。

写真は中国東部の江蘇省常州で、毎年恒例の大学入試「高考」を前に、試験問題を解く高校生 (Photo by STR/AFP via Getty Images)

大紀元の2021年6月の報告によれば、中共自身の「輿情(世間の反響)」報告は、その全人民洗脳が宣伝されているほど効果的でないことを示している。

中国問題専門家、李元華氏は、習近平は個人崇拝を進めようとしており、そのためには洗脳を続ける必要があると述べた。毛沢東時代には「文化宮」(映画館・劇場・図書館などを備えた比較的規模の大きな施設)と呼ばれていたものが、現在では「文明実践中心」と呼ばれている。

1967年2月、文化大革命の最中、北京の繁華街に貼られた政治スローガンポスターの前を歩く若者たち(Jean Vincent/AFP/Getty Images)

大学の教室では、議論は毛沢東思想から逸れ、中国の独裁体制が人々に十分な発言の場を提供しているかどうかについての議論が行われている。

ある学生が中国にもう一度個人崇拝を生み出すリスクがあるかと問うが、議論はすぐに中国体制の優越性に戻る。

教室の窓の外には、建物の側面に大きな赤い宣伝横断幕が掲げられており、そこには習近平の最も好きな標語の一つが書かれている。

「新時代の中国の特色ある社会主義の偉大な勝利を勝ち取ろう」

教室内の大学生たちは、社会主義と政治宣伝の授業よりも、卒業後に直面する厳しい経済環境や「卒業はすなわち失業」という現実問題に関心を持っている。

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
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