政府は6月6日、首相官邸で経済財政諮問会議(第7回)を開き、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」の原案について議論した。石破首相は会議後、「賃上げを起点とした成長型経済」の実現に向けた取り組みの方向性や、持続可能で活力ある経済社会を構築する道筋を明確に示す骨太の方針を、今月中に閣議決定できるよう作業を進めると表明した。

今回の骨太の方針原案では、日本経済が米国の関税措置による下振れリスクに直面している一方、名目GDPが600兆円を超え、賃金も2年連続で5%を上回る賃上げ率が実現するなど、成長と分配の好循環が動き始めている現状を評価している。政府は、デフレへの逆戻りを防ぎ、成長型経済への移行を確実にするため、当面のリスクへの備えを万全にしつつ、全国各地の成長力を強化する方針を示した。
特に「賃上げこそが成長戦略の要」と位置づけ、減税による手取り増ではなく、賃上げによる手取り増を目指す考えを強調した。物価上昇を上回る実質賃金の上昇を社会的な規範として定着させ、現在および将来の賃金・所得が持続的に増加する「賃上げを起点とした成長型経済」の実現を目指すとしている。
この実現に向けては、中小企業・小規模事業者の賃金向上を後押しする5か年計画を実施し、2029年度までの5年間で日本経済全体で年1%程度の実質賃金上昇を目指す。価格転嫁や取引の適正化、生産性向上、事業承継・M&Aによる経営基盤強化、地域の人材育成と処遇改善など、多角的な政策を総動員する方針である。

また、2020年代に全国平均の最低賃金を時給1500円に引き上げる目標も掲げており、その達成に向けて中小企業への支援を強化することが盛り込まれている。地方創生やデジタル・グリーントランスフォーメーションの推進、防災・減災、国土強靱化なども骨太方針の柱となっている。
一方、財政健全化については、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を「2025年度から2026年度を通じて可能な限り早期」とし、従来の2025年度黒字化目標から柔軟な表現に修正した。これは、現状の経済環境やリスクを踏まえた対応とされる。
政府は今後、与党との調整を進め、6月中に骨太の方針を閣議決定する予定だ。今回の方針が、賃上げを起点とした成長型経済の実現と、持続可能で活力ある経済社会への道筋を国民に明確に示すものとなるか、注目される。
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