中国共産党の独裁にたった一人で立ち向かい、真っ向から異を唱えた「四通橋の勇士」「ブリッジマン」こと彭載舟(ほうさいしゅう 本名・彭立発)氏が、当局により秘密裏に懲役9年の刑を言い渡されていたとする情報が拡散し、世界に衝撃が広がった。
沈黙を貫いてきた中国政府に、改めて国際的な非難が高まる。
「四通橋事件」とその影響
2022年10月13日正午ごろ、中共第20回党大会を目前に控えた北京市の陸橋「四通橋」に、白地に赤文字の巨大な横断幕が掲げられた。掲げたのは、建設作業員に扮した彭立発氏だった。

横断幕には、「PCR検査より食事を」「封鎖ではなく自由を」「嘘ではなく尊厳を」「文革ではなく改革を」「指導者ではなく選挙を」「奴隷ではなく公民を」、そして「独裁の国賊 習近平を罷免せよ」など、現代中国人の切実な叫びが記されていた。

彭氏は歩行者や車両の注意を引くために可燃物を燃やして煙を出し、拡声器でスローガンを流し続けた。逃げることなく現場に留まり、警官に連行されるまで最大限の抵抗を貫いた。
その後、彼の行方は公にされず、正式な起訴状も公開されないまま、家族も厳重な監視下に置かれるようになった。

たった一人で中国共産党(中共)体制に異を唱えたこの行動は、世界中の華人や民主活動家に深い感銘を与え、各地で共鳴が広がり、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、オークランドなどで釈放を求めるデモが相次いで行われ、ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする人権団体も声明を発表し、彭氏の姿とスローガンは、世界の抗議現場で象徴として掲げられるようになった。
2023年10月13日には、米国下院の中国特別委員会マイク・ギャラガー委員長が、彭氏をノーベル平和賞に推薦する意向を明らかにし、「習近平体制への歴史的抗議を称えるべきだ」と述べた。
消息判明とネットの反応
事件から2年近く沈黙が続く中、2025年7月8日、中国の人権問題を長年報じてきた著名ブロガー「昨天(@YesterdayBigcat)」がSNS上で、「彭氏は『騒動挑発罪』と『放火罪』で懲役9年の判決を受け、すでに2か月前から服役している」と投稿。これはいまだ正式発表がない非公式情報であるが、広く注目を集め急速に拡散した。
ネット上では「勇士は倒れず! また会う日まで!」「彭立発は無罪、即時釈放を!」との声が殺到した。

引き継がれる意志
「四通橋事件」は、2022年末に全国で広がった「白紙革命」の引き金となり、中国における言論の自由と市民の抗議権の制限に国際的な関心が高まる契機となった。
彭氏の抗議に触発され、2024年には湖南や四川などでも若者が同様の行動を起こし、同様のスローガンを掲げたが、いずれも逮捕された。彭氏の行動は、多くの市民に「沈黙しない勇気」を与え続けたのだ。

橋の上に立ち、真実を叫んだ男。その声を消しても、魂は消えない。彭氏の一歩は、沈黙を破る波紋となって、今も世界に広がり続けている。

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