中国・北京では9月3日、「抗日戦争勝利80周年」を記念した式典と軍事パレードが予定されている。
中国共産党の党首、習近平が閲兵し、ロシアのプーチン大統領ら外国要人の参加も見込まれる。テーマは「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利」。政府系メディア人民網は、日本の外交筋が「反日色の強い歴史観が国際社会に広まる」と警戒し、各国に「参加自粛」を呼びかけていると明かしたと報じている。

北京市内ではすでに3度の大規模リハーサルが実施され、新型戦闘機、空母艦載機、極超音速兵器や弾道ミサイルなど「純(中)国産」の最新兵器を披露する準備が整った。しかし華やかな演出とは裏腹に、市内は厳重封鎖で市民生活は窒息状態だ。
地下鉄の車両には兵士と警察犬が張り付き、ある映像では1両に3頭の警察犬が並ぶ異様な光景が映し出され、「まるで末日の街だ」と嘲笑された。さらに天安門広場や首都のメインストリート・長安街には、数歩ごとに軍や警察が立ち並び、北京全体が戦時下さながらの緊張に包まれている。

当局が神経を尖らせているのは、「独裁を終わらせろ」と訴える横断幕が掲げられ世界に報じられた「四通橋事件(2022年北京)」の再発だ。そのため臨時の「橋番」や「電柱監視員」を日当100〜200元(約2〜4千円)で大量に雇い、街角に立たせている。さらに日給200元(約4千円)の「朝陽大媽(地域パトロール役の主婦層)」を100万人動員するとの噂もあり、「これだけで50億元(1000億円超)が消える」とネットで皮肉られている。軍事パレード以上に「社会安定維持」に巨額が注がれているのが実態だ。

それでも市民の不満は「トイレ革命」として噴き出した。北京の公共トイレには「独裁者は退け!(独裁者下台!)」「中国に民主と法治を」といった落書きが相次ぎ、SNSで拡散。「監視カメラだらけの中国で、唯一監視できないのがトイレ。庶民の叫びがそこに刻まれた」と評論家は指摘する。それでも当局は陳情者を駅や空港で強制送還し、弁護士や人権派学者を「強制旅行」に連れ出すなど、反体制の声を徹底的に封じ込めている。

いくら最新兵器を並べても、世界が注視しているのは「国民を恐れて兵士と警察犬を地下鉄に並べる独裁政権」の姿だ。力を誇示するはずの軍事パレードは、結局「国民を信じられず、監視と締め付けに怯える体制」の実態を浮き彫りにする。
9月3日の式典は中国の威信を示す場であると同時に、その「強さ」ではなく「弱さ」を国際社会にさらけ出すことになる。
(北京の地下鉄車内に配置された兵士と警察犬、SNSより)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。