「終の住処(ついのすみか)」は、必ずしも陸にあるとは限らない。海の上にも、山里にも、あるいは仲間との共同生活の場にもある。老後の風景は想像以上に広がっている。
老後は「静けさ」に身をゆだねるだけでなく、「挑戦」を選ぶこともできる。限られた時間をいかに生きるか。その答えは年齢ではなく、選び取る勇気によって決まるのかもしれない。
カリフォルニア州に暮らしていた元外国語教師、シャロン・レーンさん(77)は、自宅を手放し、居住型クルーズ船「ヴィラ・ヴィー・オデッセイ」へと乗り込んだ。今後15年間、世界一周をしながら船上で暮らすという(CNNの7月5日付報道)。屋内キャビンは15年契約で約1,800万円から、月額は1人利用で約40万円。決して安価ではないが、本人は「南カリフォルニアで暮らすよりずっと安い」と笑ってみせる。
同じように「船を終のすみか」とした先駆者もいる。フロリダ州のリー・ワクトステッターさん(通称ママ・リー)は、夫の死後に自宅を売却し、豪華客船で12年間を過ごした。100カ国以上を巡り、船上での暮らしを綴った回顧録も出版している。
一方で、まったく異なる道を歩む人も少なくない。都会を離れて地方に移住し、自ら畑を耕して自給自足の生活を始める人。海外へ移り住み、年金で暮らしながら「第二の人生」を楽しむ人。都市部では、仲間と共に暮らすシェアハウス型の高齢者住宅も広がりを見せている。
老後は「穏やかに余生を送る」ことだけに限られない。世界を旅する、生きる力を自然から得る、仲間と笑い合う。人生の終盤をどう彩るか。その答えは、人の数だけ存在している。
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