中国 「情報操作では」との見方も

クリス・ウー(呉亦凡)が中国で獄中死去した噂広がる 当局沈黙で広がる憶測

2025/11/13 更新: 2025/11/13

中国系カナダ人俳優クリス・ウー(呉亦凡)が、中国の刑務所で死亡したとの噂がSNS上で急速に広がっている。

かつて人気男性アイドルグループ「EXO(エクソ)」のメンバーとして活動し、俳優や歌手としても知られた人物だけに、死亡説は大きな反響を呼んでいる。

投稿の一部は「ウーが長期間にわたり食事を拒否し、体調が悪化して死亡した」と伝えているが、現時点で当局や国営メディアによる確認はなく、事実関係は不明である。

ウーは2021年、未成年を含む複数の女性への性的暴行などの罪で懲役13年の実刑判決を受け、刑期終了後に国外追放となる予定である。当時は中国国内で「#MeToo(ミートゥー)運動」の象徴的事件として大きく報じられたが、一部では「単なる犯罪事件ではなく、権力闘争や利権の争いが背景にあったのではないか」と考える人もいる。

現在、俳優・于朦朧(ユ・モンロン/アラン・ユー、37)の不可解な死が中国社会を揺るがしている。このタイミングで突然浮上したクリス・ウー「獄中死」の噂について「民意の爆発を恐れる当局が世論の矛先をそらそうとしているのではないか」と分析・警戒する声も上がっている。

 



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監視が行き届いた中国では、一般市民はもとより、有名人の私生活から犯罪集団の動きに至るまで、あらゆる情報が当局の掌握下にある。つまり、社会全体がひとつの巨大な監視システムの中に組み込まれており、何を公にし、何を伏せるか、その「タイミング」を決めるのは、言うまでもなく当局である。

政権にとって不都合な事件が起きると、すぐに人々の目を奪うような別の話題が投下される。たとえば、有名人の不倫や薬物事件、政財界の大物による汚職摘発、巨額の脱税疑惑、あるいは社会の闇を暴くような派手なスキャンダルなどだ。ときには「犯罪組織の一斉摘発」や「マフィア壊滅作戦」といったニュースが一斉に報じられることもある。

過去を振り返れば、いつもこのパターンだ。決まりきった手口でありながら、毎回確実に効果を上げてきた。人々の関心はそちらへ逸れ、もとの事件への注目は次第に薄れていく。こうして世論の矛先は巧みにすり替えられ、真相を問う声はかき消されていくのだ。過去にも同様の手口が繰り返されてきた経緯から「今回の噂も世論誘導の一環ではないか」と見る市民は少なくない。

ウーの消息をめぐってはこれまでも「急激にやせた」「情緒が不安定」「刑務所内で『班長』になった」など、さまざまな噂が流れてきた。今年4月には、ウーが脱税容疑(約3億元=約65億円)に関与しているとして、刑務所から再び拘置所に戻されたとの情報が弁護士の投稿で拡散している。

今回の「獄中死」報道も、真相が確認されないまま広がり続けており、当局の沈黙が憶測をさらに加速させている。

 

2017年1月19日、ロサンゼルスで開催されたパラマウント・ピクチャーズの『トリプルX:再起動』のプレミアに出席したクリス・ウー (ANGELA WEISS/AFP via Getty Images)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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