中国南部の広西チワン族自治区北海市で11月24日、政府庁舎の正門に乗用車が突っ込む異例の事件が起きた。

現場では武装警察が発砲し、白い服の男性が車から引きずり出されて拘束された。だが映像はすぐに削除され、関連情報は一切閲覧できなくなった。

事件後、ネットでは完全に沈黙が強いられたが、抖音（中国版TikTok）には検索履歴だけが残り「政府庁舎で何が起きたのか」「発砲は本当か」といった言葉が並んだ。市民の間では「よほど理不尽な事情があったはず」との声が静かに広がっている。

中国では政治的圧力の強まりや景気悪化により人々の不満が蓄積し、衝突が増えている。今回の突入事件も、その流れの中で捉えられている。

本紙の取材に応じた現地の女性住民によれば、市政府の門に車が突っ込んだ直後からネットは完全に封鎖され、動画は撮っても送れず「封鎖の速さが異常だった」と感じたという。突然の遮断で現場の情報は一気に途絶え、周囲には緊張が広がった。

運転者の動機については何も示されていない一方で、地域では「ただの暴走ではあり得ない」「理由がなければ政府庁舎には突っ込まない」という受け止めが強く、今回の出来事は建国以来、北海で初めての大事件とみられていた。市長は就任してまだ1か月足らずで、当局が異常に警戒している様子も伝わっている。背景には社会全体の疲弊と体制の行き詰まりがあるとされ「国全体が混乱しており、誰もがそのことに気づいている」との声も聞かれた。

海外のSNSでは、中国国内では禁じられている本音があふれた。

「こういう事件は全部、中共が人々を追い詰めた結果だ」
「今回ばかりは、怒りを向ける相手をようやく間違えなくなった」
「中国人はもう限界。高圧統治の中で、敵が誰なのかが見えてきた」

無差別事件が起きるたびに、ネットでは必ず「出门左转是政府（家を出て左を向けば、そこに問題の根源＝政府がある）」という常套句が書き込まれてきた。

そうした背景もあり、今回ばかりは「ようやく本当によくやった」とする反応が驚くほど多く、海外のコメント欄には異様なほどの安堵と共感が広がっていた。

（「事件」当時の北海市の市政府庁舎前の様子、2025年11月24日、中国南部・広西チワン族自治区北海市）