中国潜水艦が核ICBM試射 狙いと米中関係への影響を分析

2026/07/15 更新: 2026/07/15

中国が潜水艦発射型ICBMを太平洋で試射。核戦力誇示、軍内部統制、対米交渉戦略という三つの狙いを軸に、国際社会への影響とリスクを読み解く。

7月6日、中国共産党(中共)の原子力潜水艦が太平洋に向け、核弾頭を搭載可能な大陸間弾道ミサイルを試射した。この動きに対し、多くの国が非難している。とりわけ注目するのは、習近平が5月に訪中したトランプ氏との間で「建設的な戦略的安定関係」の構築に合意し、9月には訪米を予定している点である。このような状況下での試射の意図は何か。アメリカとの軍事的緊張を高める意図があるのか。本稿では、中共には少なくとも三つの主要な狙いがあると考える。  

一、核戦力を誇示し 世界的野心を隠さない  

潜水艦発射型戦略ミサイルの試射は、中共にとって重大な軍事行動である。1980年5月18日、中共は初めて大陸間弾道ミサイルの試験を実施し、「東風5号(DF-5)」を酒泉発射センターから打ち上げ、南太平洋の目標海域に着水させた。これにより、中共はアメリカ・ソ連に続き、三番目に大陸間弾道ミサイル技術を保有する国となった。  

その後40年以上にわたり、大規模な試射は行われなかったが、2024年9月25日、ロケット軍が車載機動方式による大陸間弾道ミサイルの太平洋方向への発射を実施し、同海域での発射を再開した。そして地上発射から間もない2026年7月6日、潜水艦発射による試射が行われ、「第二撃能力」を明確に誇示する形となった。これは意図的に核戦力を国際社会に示した動きである。  

明らかに、中共は長年進めてきた核戦力の大規模拡張を、もはや隠そうとしていない。2010年に中国は世界第2位の経済大国となり、その財力を背景に軍事力の拡張を加速させた。習近平の就任以降は核兵器への依存が一層強まり、かつての「少なく持ち、より良く保つ」という方針から転換し、米露と並ぶ三極構造の形成を志向している。  

アメリカ国防総省の評価によれば、2024年末時点で中共の現役核弾頭は約600発であり、2030年には1千発を超え、2035年には1500発に達すると予測している。この規模は、現在の米露の配備核戦力(約1700〜1800発)に接近しつつある。  

習近平は軍事改革の一環として、2015年12月31日、「第二砲兵」を独立した軍種である「ロケット軍」へと改編した。2017年の第19回党大会では「2020年までに機械化を基本的に実現し、情報化建設で重大な進展を遂げ、戦略能力を大幅に向上させる」とした。さらに2022年の第20回党大会では、「強大な戦略抑止力体系の構築」を初めて明記した。  

2025年の軍事パレードでは、陸・海・空による三位一体の戦略核戦力を初めて一堂に展示した。「驚雷1」空中発射長距離ミサイル、「巨浪3」潜水艦発射型大陸間弾道ミサイル、「東風61」および「東風31」地上発射型大陸間弾道ミサイルなどを公開している。  

これらの流れから見れば、今回の潜水艦発射型戦略ミサイル試射は偶発的なものではなく、核戦力拡張の過程における重要な一歩である。中共の核戦力拡張の背景には、長期的な世界戦略がある。かつては「全人類の解放」と表現され、現在は「人類運命共同体」と言い換えられているが、その本質は変わっていない。いわゆる「百年目標」は、その過程における時間的節目に過ぎない。  

二、軍内部の粛清の中で権威を誇示  

2022年10月の第20回党大会において、習近平は空前の権力頂点に立った。しかし翌年以降、さまざまな要因の下で軍に対する大規模な粛清を進め、内部抗争は激化した。混乱を繰り返し、今年1月に中央軍事委員会副主席の張又侠が失脚したことで、ようやく習は再び軍権を掌握したとみられる。  

しかし第20期中央軍事委員会の8人のうち、現在残っているのは習近平と張升民の2人のみであり、6人を排除した。軍事委員会は深刻な機能不全に陥っている。現役の上将も30〜40人規模から現在は6人にまで減少しており(7月3日に昇格した張曙光および王剛を含めても)、習の権威は大きく低下している。  

その一方で、中共の政治日程は重要な局面に差しかかっている。秋には五中全会、来年には第21回党大会が控えている。この微妙な時期に核能力を有する大陸間弾道ミサイルを発射することには、複数の国内政治的含意がある。  

第一に、度重なる粛清の後でも戦略核戦力を維持しており、習が依然として軍の実権と核指揮権を掌握していることを示す狙いである。  

第二に、戦略ミサイルを「大国の台頭」および「強軍」の象徴として強調し、習近平の権威強化と第21回党大会への布石とする意図である。  

第三に、経済低迷による社会不安を抑制し、国内における対米不安や親米的言説を抑え込む効果を狙ったものである。  

アメリカ中央情報局(CIA)、国防総省、国務省などは、この高度に複雑な潜水艦発射による実弾試験の成功について、いくつかの点を指摘している。すなわち、粛清が一応の収束を見せ、習近平が主導権を確立した可能性、意思決定過程の極端な集中化と迅速化、そして発射の数時間前にアメリカや日本など限定的な通報しか行わなかった点は、意図的な政治的示威であるという評価である。  

さらに、核指揮系統が強く個人に集中し、従来の官僚的な承認プロセスは大幅に簡略化していることを示すものであり、高度な即応態勢と奇襲能力を誇示する狙いがあると分析している。  

三、米中関係と訪米前の戦略的駆け引き化  

昨年の米中関税戦争はかつてない激しさとなり、複数回の交渉を経て一時的な休戦に至った。今年5月、トランプ氏が訪中し、両国は「建設的な戦略的安定関係」の構築で合意した。  

しかし6月、習近平は北朝鮮を訪問したものの、アメリカが重視する非核化問題には言及しなかった。さらに今回、「第二撃能力」を強調することで、再びアメリカを刺激する形となっている。その意図はどこにあるのか。  

中共は、攻勢と守勢を使い分ける戦術を採っているとみられる。トランプ政権復帰後、アメリカは強力な対中政策を次々と打ち出し、中共に圧力をかけている。一方で中共側の交渉カードは限られており、9月の訪米に向けて立場を有利にする必要がある。  

このため、北朝鮮問題や戦略核兵器といった分野を交渉材料として前面に押し出している。今回の潜水艦発射型ミサイル試射には、以下のような具体的意図があると考えられる。  

第一に、海上配備型核打撃能力の信頼性の検証である。  

第二に、アメリカ軍の戦略再編……すなわちヨーロッパからインド太平洋への戦力シフト……への対抗として、核戦力を反介入・領域拒否(A2/AD)の最終的な支柱とする狙いである。  

第三に、アメリカの同盟国およびパートナーに対する威嚇と分断である。  

第四に、核戦略の面で中米が相互確証破壊に基づく対等な関係にあることを認めさせる意図である。  

今回の試射がもたらす中長期的影響  

中共の計算は緻密に見えるが、実態としては一方的な前提に依存している面が強い。  

第一に、国内では必ずしも支持が広がっておらず、上層部の権力闘争も続いている。かつて中共はソ連を「衛星は宇宙へ上がったが、赤旗は地に落ちた」と批判したが、現在は同様の問題に直面している。  

第二に、アメリカ側の戦略的選択肢は中共よりもはるかに多い。拒否戦略の強化、グアム・日本・韓国への戦略戦力の常態的配備、ミサイル防衛網の強化、さらには同盟国の防衛力拡充など、多様な手段が存在する。  

第三に、国際社会の反応も厳しさを増している。アメリカのみならず、日本、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、さらには南太平洋の島嶼国までが相次いで非難を表明しており、中共の国際的評価はさらに低下している。  

以上を踏まえると、中共の今回の行動は、結果として自らの立場を損なう可能性が高いと言わざるを得ない。いわば自らの行動が自らを縛る結果となっているのである。

王赫
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