中国当局は日本の固定資産税にあたる不動産税の本格導入に取り組む考えを明らかにした。中国の財政相・肖捷氏が20日、中国共産党機関紙・人民日報で発表した文章で、「2019年までに不動産税(房産税)の導入に向けて立法手続きを完成させ、2020年に本格導入が始まる」と述べた。
中国は長年、不動産税の導入を検討してきたが、導入への取り組みには大きな進展が見られなかった。上海市と重慶市では2011年以降、実験的に不動産税の導入を行っているが、一部の物件のみが対象となっているため、徴収規模は極めて限られている。
2016年に上海市の不動産税収はわずか42億6000万元(約735億円)で、税収全体の約2%にあたり、土地売却益の5%に過ぎない。重慶市の不動産税収は57億元(約984億円)で、税収全体の約4%だった。
土地売却益の「替え玉」
中国特有の土地国有制度によって、地方政府は、期限付きの土地使用権を入札で不動産開発会社に売却し、土地売却(土地使用権譲渡)の収入が地方政府の主要財源となっている。1987年12月、深セン市で中国初の土地競売が行われて以来、地方政府の土地財政への依存度は年々高まっている。
しかし、急激な都市化が進むにつれて、土地の供給量がだんだん少なくなってきている。特に中小都市の不動産価格急落に伴い、土地財政は破綻の危機を迎えている。土地売却による収益が減少するなか、当局は不動産税に目をつけた。
中国の金融情報サイト「金融界」でコラムニストを務める孫暁骥(スン・ショウイ)氏が21日、自身の「微博」(中国版Twitter)に投稿し、「地方政府は負債総額が膨らむ一方で、税収が大幅に減少している。不動産税の導入は地方政府の収入を増加させるためだ」と指摘した。
2001年から2010年まで、地方政府による土地の使用権譲渡収入は1296億元(約2兆2400億円)から2兆9000億元(約50兆800億円)に急増し、歳入全体の割合も16.6%から76.6%に上昇。しかし、2016年には約42%まで減少した。
土地売却益が減少するにも関わらず、国有企業や地方政府の債務が急速に増え続けている。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは今年5月、中国の人民元建てと外貨建ての国債格付けを引き下げたと発表し、債務増大と経済成長鈍化による財政の悪化に警鐘を鳴らした。
ムーディーズは5日付の最新リポートで、中国の債務問題について、今年9月末時点の国有企業の負債総額は47兆6000億元(約822兆円)にのぼり、前年同期から20.9%増加し、今年6月末時点で地方政府が直接返済責任を負う15兆9000円(約275兆円)の約3倍に当たると指摘した。
住宅高騰の熱冷ましか?
不動産税の導入は住宅市場の過熱を抑制し、住宅価格の低下が期待されている。特に、北京や上海、深圳などの一線都市に住む多くの人々にとってはマイホームを購入するのが切実な問題である。
それに対し、北京智方圓税理士事務所の共同代表取締役・王冬生氏はこのほど、中国の経済紙・中国経営報の取材で「課税というのは、コスト増加または収入減少のいずれかをもたらすものだ。増税の場合はその分を価格転嫁されて値上がりする可能性が大きい。 住宅価格は主に市場の需給によって決まるため、不動産税導入だけで根本的な変化を起こすのは難しい」と述べた。
土地国有のため、法的根拠はない
北京師範大学不動産研究センターの董藩(ドン・ファン)センター長は24日、中国メディアの新浪財経で文章を掲載し、「不動産税(固定資産税)は私有財産に課税するもの。土地国有制度下で不動産が完全な意味での私有財産として成り立たないため、法的根拠が欠如している」と指摘し、「不動産税が導入されたら、史上で徴税コストが最も高く、最も論争を呼ぶ税目となってしまう」と話した。
中国では土地は国のものであるため、住宅を購入しても、個人の所有権は認められておらず、70年間の使用権だけを購入することになる。中国の不動産王で華遠不動産集団の前会長・任志強氏は2015年12月、「2016網易エコノミスト年次総会」で「政府はすでに一括で70年間分の賃料を支払わせた。こうした状況を踏まえ、不動産税を徴収するのは強盗行為にあたる」と発言した。
(翻訳編集・王君宜)
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