ことし脱北した北朝鮮の兵士、炭疽菌抗体を保有=韓国情報局

2017/12/28 更新: 2017/12/28

韓国情報局の関係者によると、ことし韓国に亡命した北朝鮮の兵士1人は、生物兵器に指定されている炭疽(たんそ)菌に対応する抗体を持っていることを明かした。この兵士の抗体が、ワクチン接種または炭疽菌の感染によるものかは判明していない。

韓国「チャンネルA」26日に出演した匿名の韓国情報局関係者によると、兵士が瀕死状態で炭疽菌に対する免疫能力を発揮したことを確認した。兵士の氏名や脱北した日付は明かされていない。

炭疽菌は土壌中の常在細菌であるが、家畜やヒトに感染して炭疽(症)を発症させる。しかし第2次世界大戦以後は、各国の軍事機関で生物兵器として研究している。炭疽菌を肺から吸入すれば、抗生物質の投与かワクチンを摂取していない限り、90%の確率で死亡する。

炭疽菌を使用した、未遂を含むテロ事件が実際に日本や米国で起きている。1993年、東京都江東区亀戸では、オウム真理教が起こした生物兵器テロ未遂事件が発生。2001年、米国同時多発テロ「9.11」のわずか一週間後、大手テレビ局や出版社、上院議員に対し、炭疽菌が封入された容器の入った封筒が送りつけられた。炭疽菌の感染により、5人が肺炭疽を発症し死亡、17人が負傷した。

生物兵器の使用は戦闘前か初期段階で=米ハーバード大学研究機関

北朝鮮は、朝鮮人民軍810部隊の傘下組織である平壌生物学技術研究院(2015年設立)で、生物兵器を開発しているとの疑惑がある。同研究所には9月、金正恩・朝鮮労働党委員長が視察している。3階建ての研究施設にある温室や試験場で、トウモロコシや稲など試験農作物を見て回る写真が、 朝鮮中央通信より公開されている。専門家は、農業分野に使われる設備が、生物兵器をつくる施設になりうると分析している。

北朝鮮、炭そ菌など30種類保有、人で運ぶ戦略も=米韓研究

9月、金正恩・朝鮮労働党委員長が、朝鮮人民軍810部隊の傘下組織である平壌生物学技術研究院(2015年設立)を視察している。朝鮮中央通信が公開(STR/AFP/Getty Images)
 

10月、ハーバード大学ケネディ行政大学院の研究機関「ベルファーセンター」は、北朝鮮の生物兵器開発についての研究を発表した。それによると、北朝鮮が生物兵器を国外で使う場合、軍事衝突の前か、戦闘の初期段階になるという。早いうちに相手国内でパニックを引き起こし、指揮を乱すことを狙うとした。元MITフェローでノンフィクション作家の山田敏弘氏は、ITmediaでの発表記事で「確かに日本なら自衛隊も動員され、多くの人員がそちらに割かれてしまう可能性もある。その間に、別の軍事攻撃を受ければ対応はままならないかもしれない」と指摘している。

同レポートは「生物兵器を散布するために、北朝鮮はミサイルやドローン、飛行機、噴射機、または感染した人間を使う恐れがある」とした。

朝日新聞は12月20日、韓国ソウルの情報関係筋の話として、北朝鮮が米国に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)に炭疽菌を搭載するための実験を始めていると伝えた。報道によると、大気圏再突入時の7000度以上の高温でも耐えうる装置を開発しているという。

在韓米軍や国防省職員は2004年より、炭疽菌と天然痘に対するワクチンを接種している。北朝鮮当局も同様に軍高官は天然痘ウィルスのワクチン接種は必須との報道もある。

今冬、日本海側に北朝鮮籍とみられる木造船が例年より多く漂着したことが注目を集めた。海上保安庁は12月27日、今年、北朝鮮籍とみられる船の漂流・漂着件数が100件になったと発表した。木造船に乗っていた北朝鮮人とみられる船員は計31遺体、生存者42人を確認。ともに過去最多だったという。

自民党の青山繁晴参院議員は11月30日の予算委員会で、バイオテロの危険性を指摘した。「北朝鮮が兵器化された天然痘ウイルスを持っていることは国連の専門官の間では常識だ」として、今冬、日本海側から上陸した人物に感染者がいる場合の危険性を訴えた。

(2017年11月13日、南北軍事境界線から北朝鮮の兵士が脱北する様子。今回炭疽菌抗体を持つ兵士かどうかは定かではない。在韓国連軍の監視カメラが撮影)

(編集・佐渡道世)

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