中国で今度は「花火革命」…続く若者の挑戦 香港作家「大変革の条件揃った」

2023/01/14 更新: 2023/01/15

1月1日の前後、山東省、河南省、広西省、重慶市など中国各地で当局が新型コロナの感染拡大防止のために禁じている花火などが打ち上げられた。内陸部の河南省周口市では2日夜、新年を祝う若者の一部が花火の使用を巡って警察と衝突する事件が発生した。こうした当局の権威に対する露骨な挑戦をネット上では「花火革命」と呼ばれている。

河南省周口市での衝突事件では、市民がパトカーを襲う様子などが動画におさめられ、SNSなどに拡散された。事件は市内の主要な大通りに面した公共広場で起きた。

新年を祝うために花火を使っていた一部の若者を警察が連行しようとしたところ、民衆がパトカーを取り囲み抗議し、解放を求めた。怒りの民衆はパトカーにモノを投げつけるなどして破壊し、一部の若者はパトカーのボンネットによじ登りダンスをして群衆を盛り上げた。パトカーはついに、この後に民衆によってひっくり返されてしまった。

後に地元警察は、騒動を挑発したとして若者6人の逮捕を発表した。また事件の翌日(3日)、地元周口市の鹿邑県教育体育局は緊急会議を開き、再発防止を急いだ。今回事件を起こしたのが青少年や学生であったことから、地元当局は「学生の思想教育に力を入れ、愛国教育や感謝教育を施すよう」学校に求めた。

「各地の民衆が公然と当局に挑戦するに至ったのは、何も単に禁じられている花火を上げたいからではない」ー-在米時事評論家の秦鵬氏は自身の評論番組でこう指摘する。

「過去3年に及ぶ厳しい感染防止措置の中で、人々はあまりにも多くの不満や怒りを心に秘めている。多くの人は職を失い、家族を亡くした。無情に封鎖をする政府、朝令暮改の防疫方針に人々は振り回され、繰り返される欺瞞にはもううんざりだ。中国では旧正月などの祝日に、厄払いのために大音量の爆竹を鳴らすという風習がある。人々は疫病がもたらす恐怖やこれまでのうっぷんや不運などを花火に託して、打ち上げたい気持ちなのだろう」

今回の花火を巡る民衆と当局の衝突が「花火革命」と呼ばれるのは、この事件の背後には、「人の心の変化がある」と秦氏は指摘した。

「花火革命の背後にあるもの、それは白紙革命の時と同じ。いずれも権力に対する国民の怒りと反発だ。それら怒りの火種は山火事のようなもので、必ず何らかの方法を通じて噴出するだろう」

2023年の大晦日、南京市では多くの市民が自発的に「中国革命の父」である孫文氏の銅像の前で新年を迎えた。中国共産党の高級幹部養成機関「中共中央党校」の元教授・蔡霞氏も秦氏と同様の見解を示した。蔡氏は、「孫文氏への記念、これは過去では見られなかった光景で、人々の心に大きな変化が起きていることを示している。この事件にはとても深い意味がある」とツイートした。

「過去3年は、『理不尽』の一言に集約される」

昨年末、ネット上では北京の大学教授が書いた2022年をまとめたある「現代詩」が注目を集めた。この文章は多くの人の共感を呼び、広く拡散されたが、後に当局によって封殺された。

その一部を紹介したい。

「2022年、あるいは過去3年は『理不尽』の一言に集約される。上からの理不尽な指示を下が盲目に実行し、専門家は噓八百をならべ、テレビは嘘しか言わない」

「『人民第一』『生命第一』と謳っているが、私たちが目の当たりにしているのは悲惨な世界だけ」

「首に鎖をつながれた8児の母(江蘇省徐州市豊県)、唐山の集団暴行事件、上海のロックダウン、健康コードが突如外出禁止の『赤』に変わった河南省、フォックスコン(iPhone工場)での大混乱、コロナ検査の不正、臨時隔離施設の混乱…色々なことが起きたが、政府は何もしなかった。政府は利益と権力の争奪のために党大会を開きたいだけ」

「新疆の火が全国を目覚めさせたなんて、誰が想像できただろう。天に向かって掲げられた白い紙、街中には『(共産党)退陣しろ』の声が響いた。ウイルスの感染拡大について中国政府の発表前からいち早く警鐘を鳴らしてくれた武漢の李文亮医師や北京の陸橋で反コロナのスローガンを掲げた彭載舟氏、これは人類の良知であり、人民の火焔だ」

「現在、人々は病院や火葬場に入るのにも並ばなければならない。馬鹿げている。それなのに、官製メディアは相変わらず毎日嘘をつき、外務省も専門家もいつもと変わらずでたらめなことを言っている。当局者はどこにもいない。国民はひたすら苦痛に耐えている」

中国政府の本当の「ボトムライン」

今月4日、北京の専門家である趙小海氏のSNSのチャット履歴のスクリーンショットがネット上に流出した。趙氏によると、習近平国家主席は昨年2月に、専門家グループによる「秩序ある開放を行うための提案」を却下したという。「たった1人で70人の専門家の意見を却下できる、これが専制の特色だ」といった皮肉のコメントが寄せられた。

中共当局は国家統治について論じる際に「底線思維(Bottom-line Thinking)」という表現を多用しているが、「彼らにとっての『ボトムライン』や最優先事項は統治の維持であり、決して国家や人民の利益ではない。これは過去も現在も変らない」と前出の秦鵬氏は指摘する。

しかし、「物極必反(ぶっきょくひっぱん)という言葉にもあるように、物事は頂点に達すると必ず反対の方向に転じる。現在、覚醒する中国人民や世界人民がどんどん増えている。中共当局のやり方は人々の怒りを蓄積するだけだ。今回の感染爆発では中共の体制内の多くの幹部も被害者だ。今や政府に対する怒りは都市部や農村部のみならず、高い塀に囲まれたお屋敷の中にもくすぶっている」と秦氏は述べた。

中国の年金制度は財源不足で非常に苦しい。そこで今回の感染爆発で多くの高齢者が亡くなり、ネット上には「その分の年金を払わなくて済むから政府はほくそ笑んでいるだろうな」といったコメントが多く上がっている。しかし、これには「副作用がある」という指摘もある。

中国ではここ数年、深刻な就職難に経済失速で、両親や祖父母の年金で食いつないでいる若者は多い。「これまで頼りにしていたこの年金がなくなると、今後はより多くの社会問題が起きるだろう」など先を憂う声も増えている。

香港の著名な作家、顔純鈎氏は最近、自身のフェイスブックに「量的変化から質的変化へ:中国は大きな変化が起こる前夜にいる。2023年、大きな変化が起こる条件はすべて整った」と題する文章を投稿した。

顔氏はこのなかで「歴史の歩みには遅い時もあるが、遅い時は停滞しているのではなく、より速く進むためのパワーを蓄積しているのだ。習近平は過去10年間で中国共産党崩壊のための条件を整えてきた。いま、その条件が全て整った」と指摘した。

秦鵬氏も、「2023年は大きな変化の年になるだろう」と推測した。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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