黒竜江省チチハル市の中学校で23日、体育館の屋根が崩落する事故が起きた。崩落時に体育館内で練習をしていた女子バレーボール部の生徒や教員らが下敷きになり、これまでに11人の死亡が確認されている。
体育館の屋根全体が、そっくり抜け落ちた。館内にいた生徒は、避難するひまもなかった。この信じ難い事故をめぐり、民間では「おから工事(手抜き工事)」の疑惑が噴出するとともに、地元当局に対する責任追及の声が高まっている。
日に日に高まる厳しい世論を前に、中国当局は事故関連の投稿を削除している。複数の代表的な官製メディアは性的暴行事件で服役中の人気ポップスター、クリス・ウー関連のニュースを大々的に報じている。クリス・ウーはカナダ国籍の華人歌手で、この話題は、一度ホットリサーチのトップにランクインするほどの「熱度」に押し上げられていた。
こうしたネット上の意図的な操作は、チチハル市当局がこれ以上槍玉に挙げられないように「世論の注目を逸らす狙いがあるのではないか」と指摘されている。
中国のニュースサイト「経済観察網」が事故の起きた中学校の新築校舎(体育館のとなりで建設中の校舎)の入札書類をを調べたところ、このプロジェクトは2回にわたる入札を経ており、2回目の落札価格が1回目を上回っていたこと、および2回目の入札過程において不透明な点があったことを発見している。
チチハル市当局は24日夜、記者会見を開き、事故の原因は「体育館の屋根に置かれた大量の建築用資材が、降り続く雨を吸って重くなったためだ」と主張した。
中国メディア「新民晚報」が情報筋の話や証拠動画を引用して報じるところによると、問題の建築用資材は約8カ月前から体育館の屋根に置かれていたという。しかし事故の4カ月前、この体育館は市教育局による安全検査に合格している。
つまり、屋根に置かれた建築用資材について、安全検査の際に「危険」と判断できなかったとすれば、検査の目が甘かったという意味で責任が問われることは必至であろう。
さらに「おから工事」の実態の有無が、今後厳しく追及されることになる。ただし、そうした「追及」は全て世論によるもので、中国の当局が手加減なく、自己解剖的に行うことはありえない。すでに始まっている官製メディアの「世論誘導」は、そのことを踏まえた布石として、当局が世論の追及をかわすための操作であると言ってよい。
(下は全て、カナダ国籍の華人歌手、クリス・ウー関連の不祥事を伝える中国の主要な官製メディアの記事。チチハルの体育館崩落事故を伝える記事は、一つもない)
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