「天に代わって正義を行う」17歳息子が親の仇討ちで「城管」を刺殺=中国

2023/09/25 更新: 2023/09/25

中国には「城管(城市管理)」という公的な組織がある。無許可での路上販売などの取り締まりを、主な任務としている。

しかし「城管」の実態はというと、町のゴロツキを雇って制服を着せたような連中で、非常に威圧的で暴力そのものである。さらには職務にかこつけて、庶民が商売する売り物をごっそり奪い取っていく強盗まがいのことも平気でする。その横暴なふるまいから、市民の反感や恨みを買うことも多い。

「城管」は制服を着た暴力団

それでも、日々を生きていくための生業を欠かせない庶民は、たとえ「城管」による暴力の危険があったとしても、命がけで路上での商売を続けている。

下の映像は、城管が果物売りの女性をつかまえ、背負い籠のなかの果物を路上にぶちまける場面である。公務員というより、公権力を笠に着た暴力団と言うべきであろう。

こうした城管による「庶民いじめ」は枚挙に暇がない。天秤棒にわずかな野菜をかついで、街へ売りにきた90歳の農民のお婆さんが、城管に棒で殴られ、頭から血を流している動画もある。

日本では考えられないことだが、今の中国では、これが日常の光景になっているのだ。

 

(城管が果物売りの女性をつかまえ、背負い籠のなかの果物を路面にぶちまける場面。李沐陽氏のツイッターより)

 

替天行道「天に代わって正義を行う」

YouTubeなどで中国関連の時事ニュースを報道する番組「新聞看点」の司会をする、時事評論家の李沐陽氏は21日、「17歳の青年が、親をいじめた城管2人を刺殺。法廷で『私は天に代わって正義を行った』と語る」内容の文章を自身のSNSに転載した。

この事件そのものは、2014年の夏に起きている。それがなぜか最近、中国のネット上では、この事件に関連する文章が大手ポータルサイトなどで頻繁に取り上げられているのだ。

当時、高校生だった王さん(男性、17歳)は、いつものように体に障害をもつ父親が夜市に出している屋台を手伝っていた。そこに、通りがかりの城管2人が目をつけ「出店料を払え」と迫った。

「うちは移動式の屋台です。出店料は必要ないはずですよ」と父親が説明したが、城管たちは全く聞き入れない。「出店料」にこじつけて私的に金を得たい城管たちは、ついに痺れを切らし、蹴り上げるなどして屋台を破壊した。

この時、屋台にあった高温の油が父親にかかった。全身に火傷を負った父親は病院に運び込まれたが、もともと貧しいこの一家は高額な医療費を負担できず、この火傷がもとで、ついに父親は亡くなった。

それまでの間、息子の王さんは、医療費をなんとか工面するためにあちこちで借金しようとしたが、お金は集まらなかった。途方に暮れた王さんは、何度も(加害側である)城管部門に対して賠償を求めたが、微塵の同情も得られず、追い出されるばかりだった。

父親の死をきっかけに、王さんは「仇討ち」を誓った。そしてついに、父親の命を奪う原因を作ったあの城管2人を見つけ出し、自らの手で制裁を行った。

裁判の席で、王さんはこう語った。「私の父はいじめられたのに、誰も何もしてくれなかった。私は父親の敵討ちをした。私は天に代わって正義を行ったのです」。

この「天に代わって正義を行う(中国語:替天行道)」は、小説『水滸伝』にも出てくる決まり文句である。梁山泊に集まった108人の英雄豪傑が悪徳官吏を打倒し、真の救国を目指す物語にみられる「替天行道」は、昔から中国の農民一揆のスローガンでもあった。

王さんは懲役25年を言い渡され、事件から9年経った現在も服役中だ。警察による捜査の結果、殺害された城管2人は「職権を乱用して恣意的にお金を巻き上げること」を日頃から行っていた事実が判明している。

ただし、補足するが「職権を乱用して恣意的にお金を巻き上げること」は、城管には普遍的にみられる悪質な行為である。また、今の中国の警察も、例えば「交通違反」を乱発して罰金を稼ぐなど、同類と言ってもよい性質をもつことは否定できない。

「城管たちも、中共の体制下の犠牲者」

筆者(李凌)は、このニュースを自身のSNSに転載した李沐陽氏に連絡をとり、この事件および中国における「城管」の社会問題について、コメントを依頼した。

以下に、李沐陽氏のコメントを邦訳して紹介する。

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「天に代わって正義を行った(替天行道)」。このセリフは、この青年の目から見た「城管」に対する考えを反映したものでしょう。確かに中国の「城管」の多くは、ならず者やチンピラ、ひいては現地の暴力団員だったりするのです。

中国の城管は、チンピラや盗賊の代名詞にすらなっています。露天商を取り締まることを仕事とするこの人たちの多くは、他人を尊重することなど知らないのです。人をいじめ、いたぶることを楽しんでさえいます。

この角度から見れば、青年の父親が死亡するきっかけを作った城管たちが刺されたのは(殺人は肯定できませんが)自業自得と言えるかもしれません。

米国の街角にも、小さな商売をする人たちはたくさんいます。しかし米国の警察は取り締まるどころか、この人たちを助けているのです。なぜ、そうするのでしょうか。それは米国の警察が、人を尊重しているからです。人にはそれぞれの生き方があり、全て尊重されるべきなのです。

いっぽう、中国の城管たちは哀れなものです。長年いじめられてきた民衆が限界に達し、ついに反撃に立ち上がる時、真っ先にターゲットにされるのはこの人たち(城管)でしょう。

実際に、人々が本当に反抗する相手は中国共産党です。そのとき城管は、中共の具体的な化身(体現者)になってきたため民衆の攻撃の標的にされるのです。そう考えると、城管たちもある意味で、中共の体制下の犠牲者だと言えます。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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